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財前の言葉にレギュラー陣の身体が固まる。幻覚なのか、部室が一瞬にして北極の情景になった。そのなかで財前だけが南国リゾートにいるようだ。直ぐ様北極を抜け出した小春と遠山、石田に小石川はそれぞれに「おめでとう」と言うが、それ以外のメンバーは今にも死にそうな顔をしている。

「じょ、冗談やろ?おもろないでー」
「びびったわ。そういう冗談はやめろっちゅー話や」
「嘘はよくなかとよ」
「せやで財前。人を傷付ける冗談はあかん」
「先輩ら必死すぎておもろいわー」

彼らは外人のように高笑いをしているが、汗がだらだらと流れている。それに対して財前はにやにやしている。

「信じられへんなら名前に聞いたらええっすわ」
「でも姉ちゃんと財前が付き合うって言ってもピンとこぉへんなぁ」

遠山が首を傾げて言い放った言葉は嵐を呼んだ。白石は現実逃避をし、千歳は大きな背中を丸め、一氏は小春に泣きつき、忍足は光の速さで部室から出ていった。

「いつからなん…?」
「ちょい前」
「よりによってお前かい…」

財前の想像通りの反応に笑いそうになってしまうが、もし名前が選んだのが自分でなかったらこうなっていたのではないかと思うと笑うことが出来なかった。



「おはよう財前くん」
「おー」

翌日、財前が朝練を終えて教室に行くと、隣の席の名前が彼に気付いて声をかける。

「そうだ財前くん、なんか朝先輩たちがいっぱい来たよ」
「あー…」

財前が間延びした声を漏らす。白石たちが何を言ったのかはわからないが、名前の様子はいつもと変わらないので大したことは言われていないようだ。財前は席に座ると横目で名前を見る。その目線に気が付いた名前は小首を傾げた。

「どうしたの?」
「ほんまに俺の彼女なんやな」
「え、うん」

途端に名前の顔が赤く染まった。まだ慣れていないようだ。名前からの告白は突然だった。特別財前が言い寄ったわけでもない。あくまで自然な流れだった。

「やっと先輩らに邪魔されんですむ」
「邪魔って…」
「名前、お前ほんまに俺のこと好きなん?」

顔色一つ変えずに財前が言う。名前は照れた様子で頷いた。

「やっぱり、最初からいろいろと気にかけてくれたし」
「ふーん」
「隣にいると安心する」

名前がふっと微笑する。久しぶりに見た笑顔には最高の台詞が添えられていた。これには思わず財前も赤面してしまう。

「サイアクやわ」
「え?」
「せこすぎ、ええ加減にしぃや」
「何か悪いことしたかな?」

名前が焦った表情に変わる。それを見た財前は瞳を細めて優しく笑ったのだった。

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