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今でも信じられなくて、私は夢を見ているのかもしれないと思うことがある。ずっと憧れていた通司さんにダメ元で告白をしたら受け入れてもらえて、好きとまで言ってもらえた。幸せすぎて怖いとはこのことかもしれない。通司さんは今まで私のことを名前ちゃんと読んでいたけど、付き合い初めてからは呼び捨てで呼んでくれる。それだけで距離が縮まったような気がして喜んでいる私はまだまだ子供だ。私は相変わらず通司さんと呼んでいるが、これはこの先も変わりそうにない。自分が呼び捨てで通司さんを呼ぶなんて想像もできない。
私と通司さんが付き合い始めたことを幹ちゃんに知らせた時は本当に緊張した。私は幹ちゃんに通司さんが好きだと言っていなかったのだ。幹ちゃんの驚いた顔は思い出しただけでも申し訳なさと同時に笑いが込み上げてくる。それから幹ちゃんは通司さんに掴みかかる勢いで「名前ちゃんを泣かせたら許さないからね!」と言っていた。通司さんはその時すごい苦笑いをしていた。多分通司さんに告白をした時に私が泣いてしまったからだと思う。それは完全に私が悪かったので、幹ちゃんと別れた後に「あれはノーカウントですよ」と言ったら通司さんはニッと笑って私の頭を撫でてくれた。通司さんの手は少しタバコのにおいがするけれど、私はとても好きだ。そういえば、最近通司さんは私の前でタバコを吸わない。禁煙しているわけじゃないようだから、何か理由があるのだろうか。デート中そんなことを考えていたからか、通司さんが少し屈んで「どうかしたか?」と聞いてきた。

「通司さん、最近私の前でタバコ吸いませんよね?」

そう言うと通司さんは痛いところをつつかれたような顔をして間延びした声を出した。聞いてはいけないことだったのかと心配していると、通司さんが首の後ろを押さえてそっぽを向く。

「いや、それはな…。まあ確かにそうだけど」
「……聞いちゃまずかったですか?」
「そうじゃねぇけど」

通司さんが再び私の方を向く。少しだけ赤くなっていて、照れているようだった。

「女の子にタバコは身体によくないしな」
「私はあんまり気にしませんけど」
「俺がするんだよ」

通司さんが繋いでいた手に力を込める。こんなに余裕がない通司さんを見るのは初めてのことだった。

「名前には健康でいてもらいてぇし?」
「通司さん、過保護」

たまらず笑ってしまうと、通司さんは気恥ずかしそうな顔をして目をつむった。新しい一面を発見できたし、今日はいい日だ。すると突然通司さんが立ち止まった。見上げると、いつもより真剣な表情をしている。緊張して目線を反らすと「名前」と名前を呼ばれた。おそるおそる顔を上げればふわりと香るタバコのにおい。気が付けば唇が触れ合っていた。これが初めてというわけではないが、ドキドキして仕方がない。ガチガチに緊張していると、唇が離れた瞬間に通司さんが笑っているのがわかった。

「…笑わないでください」
「わりぃ。あんまり緊張してっから可愛くてな」

くつくつと笑う通司さんの顔がまともに見れない。このキスはさっきの質問をはぐらかすようなものだったけど、通司さんの言いたいことはさっきの言葉だけでなんとなく伝わってきた。私は通司さんに大切にされている。それを実感して、私は改めて幸せを感じたのだった。

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