「好きです」


僕がそう言えば、はいつも頬を染めて『ありがとう』と返してくれる。 そんな彼女の様子を見る度に愛おしさが胸に込み上げてきて、 好きなんていう言葉では到底足りないような、もうどうしようもないようなもどかしい気持ちになってしまう。 こんな気持ちを抱く日が来るなんて思ってもみなかった。 だからこそ言葉にせずにはいられなくて、 そのつもりが無くとも自然とその言葉を零れ出してしまう。 まるで自分の想いを告げる初めて告白のようにドキドキしてしまうのだけれど、 僕達は現に恋人同士で。 だからこそ改めて想いを伝えることに照れ臭さを感じると思われるかもしれないけれど、 僕にはそんなことはなくて。 なぜならこんなにも彼女のことが好きなのに、何を照れることがあるというのだ。 もし僕が愛する人にいつも何度でも僕への想いを伝えてもらえたら嬉しいし、 僕自身も相手にしてあげたいと思うから。


は僕のこと好きですか?」


答えなんてわかっている。聞かずとも最初から。 も僕のことを好きでいてくれるから、僕らは付き合っているのだ。 彼女が僕のことを好きでなかったら、僕らは今付き合ってなんていないはずだ。 それでも彼女の口から直接『好き』という言葉が聞きたくて、そう尋ねてしまう。 照れ屋の彼女が頬を染めて何も言えなくなってしまうことを、 最初からわかりきっているのに尋ねてしまうのだ。 頬を染めたまま目を逸らしてしまう彼女の照れた表情はもう、見慣れてしまっていた。


「ねえ、ちゃんと言葉にして教えて下さい」


ほら、次の瞬間には泣きそうな表情になる。 彼女にしてみれば自分の好意を口にするのが恥ずかしいらしい。 彼女のこんな様子を見る度に僕は、 は少しばかり照れ屋過ぎるような気がしてしまう。 僕がそう言えば『アレンが大胆すぎるだけでしょ』といつも返されてしまうけれど、 そんなことはないと僕は思っている。 僕よりラビの方がもっともっと何倍も大胆だと思うわけだし、 男なんて皆こうじゃないのだろうか。 好きな人に想いを伝えたいと思うのは当然なのだから、 それが少し位大胆になってしまっても問題無いはずだ。 が照れ屋なのは、彼女が日本人であるからなのだろうか。 いや、でもそう考えると神田も照れ屋ということになってしまう。 神田が照れ屋…気持ちが悪い。 彼の照れた様子など想像したくもない。


「す、好きだよ、」


と、不意に耳に飛び込んできた言葉に僕は目を丸くした。 いつもどんなに頼んでも恥ずかしがって言ってくれない言葉を、 今日のは口にしてくれた。 驚きのあまり一瞬ぽかんとしてしまった僕には少し不満そうな表情を浮かべて『な、なによ、』と頬を染めたまま目を逸らした。 不満があるわけではない。驚いたのだ。 でもその驚きの何倍も何十倍も嬉しかったのは確かで。 自然と頬が緩むのを抑えられない。


「僕ものことが好きです、大好きです」


もう何度目か分からない愛の言葉を僕の口はまたも紡いだ。 でもその言葉を無理矢理作ったわけではない、自然と口から出てきてしまうのだ。 への愛が故に。 すると元々赤くなっていたの頬には益々赤味が増していって、再び視線を外されてしまった。 見慣れた彼女のそんな様子に僕は一つ小さな笑みを零してから、火照った彼女の頬に優しく手を伸ばした。


愛を教えてくれた人
(溢れそうなこの想いを、伝えたいと思う人)


御題配布元 : 蒼灰十字
(20080517)
(20210418)修正

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