高石タケル

高石タケル



にこにこと満面の笑みを浮かべ両手にポッキーを持っているのはタケルだった。 ソファに座る自分の前に立ちはだかる彼の姿には思わず苦笑いを浮かべた。


「タケル君…なんでそんなに嬉しそうにポッキー持ってるの…?」


わざわざ理由を問うてしまったが、彼が何故そんな事をしているのか不本意ながらは察してしまっていた。 今日は11月11日。所謂ポッキー&プリッツの日である。


さん、チョコ味といちご味、どっちがいい?」


の質問に答える気など更々ないらしい。タケルの頭の中ではすっかり事が進められているようだった。


「いやあのね、味がどうのこうのの前にどうしてポッキー持ってるか聞いてるんだけど」


訝しげな表情でタケルを見やれば、何を今更と言いたげに彼はきょとんと目を丸くした。


「え?ポッキーゲームやるからだけど」
「やるからだけど、って誰と誰が?」
「何言ってるの?僕とさんがに決まってるでしょ」
「いやいや、決まってないでしょ!」


彼の様子を見たとき、一瞬にして彼がそれをやろうとしていることに気付いていたとはいえ、 はっきりとそう断言されてしまうと思わずたじろいでしまう。 の口から不満の色が滲む言葉を聞いて、タケルは唇を尖らせた。


「えー…さん嫌なの?」
「嫌って言うか…もう若くないしそういうことをするのが恥ずかしいだけ…」
「若さなんて関係ある?」
「あるよ!そういうのは高校生とか、もうちょっと若い子達がやることで…」
「ふーん…若い子、ね」


の言葉を聞くなり思案顔になってしまったタケルに、 は彼がその遊びを断念してくれることを期待した。 とは言えその期待が裏切られ、結局ポッキーゲームに付き合わされることになっても、 自分達以外の他の誰に見られているわけでもない。 それならばまあ少しばかりタケルの気まぐれに付き合ってあげてもいいかとも思っていた。 しかしながらの期待はいろんな意味で裏切られてしまう。 突然ぐいと肩を押されて、座っていたソファに彼女の背がついた。 一瞬にして天井しか見えなくなっていたが驚いている間もなく、 彼女の視界にはタケルが入り込んで来る。 自分に覆い被さってくる彼の姿に、はこの展開の行く末を案じ始めてた。


「や、ちょっと、待ってタケル君!ポッキーゲームするんじゃなかったの?!」
「だって若い子のする遊びは嫌だって、さんが言ったんじゃない」
「言った!確かに言ったけど、だからってなんでこうなるの!?」
「子供の遊びは嫌なんでしょ?だったら大人の遊びならいいかなって思って」


自分の上に跨りまるで提案するように子首を傾げたタケルの仕草を、は一瞬可愛いなあと思ってしまった。 しかし自分の脚を押さえ付ける力の強さの可愛げのなさにはっと我に返る。 今はそんな呑気なことを考えている場合ではなかった。


「ま、待って、タケル君…!」
さんといちゃいちゃ出来るなら別にポッキーゲームじゃなくたって、僕はなんでも構わないよ?」


にっこりと笑いながら落とされる影にその肩を必死で押し返そうとするも、の抵抗は虚しく終わってしまう。 こんなことなら最初から素直にポッキーゲームに付き合っておけば良かったと、 半ば強引に塞がれた唇に翻弄されながらは後悔するのだった。


(20201111)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -