俺には死ねない理由がある。
一つはある人に会う為。
もう一つは、アイツの為に、だ。
正直ずっと俺はある人に会うことさえ出来れば、その後死んだとしても構わないと思っていた。
でも例え俺がそれで良いとしても、そうなってしまえばアイツが悲しむ。
アイツとはもちろんのことだ。
が悲しむからなんて実はただの格好付けた理由で、
本当は俺だってアイツを残してなんて逝けるわけがない。
を残して逝く位なら、蘇ってでも何でもまたこの世に戻って来てやる。
それかアイツを道連れにするまでだ。
あのアホ兎にをくれてやるつもりもないし、
モヤシにだって渡してなるものか。
そうする位なら本当に道連れにした方がマシだ。
そこにの意見は無いけれど、
アイツは俺が死んだら自分も死んじまうんじゃねェかと思うから。
現にこの前俺が死にかけた時(俺は死なねェって何度も言ってんのに未だにわからねェらしい)、
『ユウが死んだら私も死ぬから!』
って泣きつかれた。
だから死なねェって言ってんだろうが。
とにかくそういう理由で、アイツは俺が死んだら本当に死んじまうんじゃねェかと思う訳だ。
自意識過剰だって?ハッ、言ってろ。
現には俺に惚れてんだし、俺だってアイツに惚れてんだよ(って、何言わせやがる!)
だからそうなる可能性もあるって話だ。
確かに俺は死なないけれど、最近ガタが来てるのは確かだ。
怪我が治る早さが遅くなりつつある。
確かに治りはするのだが、そろそろヤバいかもしれねェ。
今回だってこんな大怪我しちまったしな。
敵は倒したから問題ねェが。
敵の残骸を目の前に近くにあった壁に寄りかかる。
傷口から血が滲んでいる。否、滲んでいるなんてレベルじゃない。
大量出血だ。俺としたことが油断したらしい。
今回のこの怪我は完治するまでにどれ程かかるだろうか。
またコムイの口煩い説教聞かなきゃなんねェかもな。
にもどやされんな。
ったくアイツは俺が怪我する度に青くなってやがる。
だから治るっつってんのによ。
そんなことを思い出していたら、ついに目の前が霞んできやがった。
やはり血を流し過ぎているらしい。
やべェな。
クソ、探索部隊のやつはどこに行きやがった。
ホント肝心な時に役に立たねェな。
(っつったら前にに怒られた)(事実だろーが)
意識が遠退きそうになって、一瞬の怒った顔が脳裏に浮かんで来た。
その怒った顔でさえ今は懐かしいものに感じる。
死ぬわけじゃねェのに何大袈裟な事考えてんだよ俺は。
とっとと教団に帰っての顔が見たい。
『おかえり』っていつもの笑顔で迎えられたい。
でもそんな願いとは裏腹に体は動かねェ。
俺は死なない、死にはしない。
そう自分でもわかってはいるのに、こんな時いつもの顔が思い浮かぶ。
俺は死ねねェんだよ、こんなところで。
を残して俺が死ぬわけねェだろうが。
死なない理由は死ねない意味
御題配布元様 :
狸華
(20080409)
(20210424)