私達に


答えなんて最初からわかっている。 それでも彼の口から直接その言葉が聞きたい私は性懲りもなく彼に問い掛けようとする。 答えなんてわかっている。私の望み通りの答えなんて返ってくるはずがないと。 わかっているのにどうして聞きたくなってしまうのだろうか。 後になって聞かなければ良かったと絶対後悔するのは聞く前からわかっているのに。 やはり少なからず期待しているからだろうか。


「神田は私が死んだら泣いてくれる?」
「……んなわけねェだろ」


ほら、やはりこれだ。淡い期待も儚く砕け散る。 所詮探索部隊に所属している私のことなど、神田は何とも思っていないだろう。 彼に言わせてみれば、探索部隊など所詮ハズレ者の集まりなのだ。 穏健派で通っている私でも、さすがにあの言葉には腹が立った。 私だってなれるものならエクソシストになりたかった。 神田が言う通り、ハズレ者なんて嫌だ。けれど別にハズレ者って思われることが嫌なんじゃない。 私達探索部隊はエクソシスト達を救うことはできない。 彼らがどんなに危険な目に遭おうとも、助けることができない。 だからこそ私も彼らと共に戦いたかった。アクマと戦える存在でありたかった。 確かに自分の生きるこの世界も大切だ。 でもそれ以上にエクソシストである彼らが大切なのだ。自分と同じ人間である彼らが。 無力でハズレ者だとしても、そんな自分達を仲間だと言ってくれる彼らが。 神田はもちろん、そんなことは言ってくれないけれど。


「ははは、そうだよね、だよねー」
「わかってんなら最初から聞くな」


相変わらず神田は反応が冷たい。 今までは苦手だった彼と知り合いになったのはアレンやリナリー達のおかげだ。 始めて話すようになってから年が近いと知り、彼等と仲が良くなるのに時間は掛からなかった。 おかげで神田とも普通に話せるようになった。 神田さん、だった呼び名がいつの間にか神田になって。 『神田でいい』と本人に言われた時にはすごく驚いたけれど、それ以上に嬉しかった。 私のことを認めてくれたのかなと思ってしまう程に。 何を認めてくれたかとか詳しいことはよくわからないけれど、何となくそう思ったのだ。 そして今ではこんなことも言い合える仲。


「でもせめて悲しいとは思ってよね」


どうせ自分はエクソシスト達には敵わないから、少しばかりの嫌みを込めてそう呟いた。 でもこんな事言ったとしても神田は何とも思いやしないだろう。 自分で聞いておいて良い加減虚しくなってきてしまう。 そう言えばいつからこんな話になったんだろう。 任務帰りの汽車の中で、時間潰しに神田に話し掛けていた。 然も鬱陶しそうな神田を無視して構わず話し掛け続けた。 そうしたら案の定神田は面倒だと言わんばかりに目を瞑ってしまって。 こうして私の虚しい質問タイムが始まったのだ。


「ハッ、てめェは俺より先に死ぬつもりか」


答えなど返っ来ないと思っていた自分の言葉に対し、思わぬ答えが返ってきて私は思わず呆気に取られた。 違う嘲られ方をされると思っていたのに予想外のこの返答は。 あまりに驚き過ぎて言葉に詰まっていると神田がもう一度、私を鼻で笑った。


「簡単に死ぬ気でいるんじゃねェよ、お前らは俺達エクソシストの為にいるんだろうが」


あなた達を救う術は無い
(それでもできる限りのことを、貴方達の為にする覚悟だから)


(20080215)
(20210424)修正

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