「おかわり!」
空になった容器と一緒に、とびきり嬉しそうな笑顔が返ってくる。
「カイル…まだ食べるの?」
「?、うん!何で?」
大粒の目を開き小首を傾げるその仕草は、まさしく子犬のそれだった。
「だって、もう7杯目だよ?」
「…あれ?オレそんなに食べてたんだ?」
「よくそんな入るね…」
苦笑しつつも、そんなに嬉しそうに食べてもらえるのは、やっぱり嬉しい。綺麗になった皿に、新しくマーボーカレーをよそうと、それだけでもうカイルの目はキラキラと輝いた。
「へへ、キオノのマーボーカレーがすっごく美味しいからだよ!」
「ふふ、ありがと。…はいどうぞ」
お皿を渡すな否や、握りしめたスプーンを煌めかせて、カイルはまた嬉しそうにそれを頬張り始めた。
「んー!おいひぃ!……なんでキオノの料理って、こんなに美味いの?」
「あはは、まぁナナリーには到底及ばないけど」
「そんなことないって!
ねぇねぇ、何かコツとかがあるの?隠し味とか…」
「コツ?…隠し味ぃ?」
特別何かしているわけでは無いし、むしろそんなのはこちらが教えて欲しいくらいだ。
と、
「あ」
「え?なになにっ?」
忙しなくスプーンを運んでいたカイルは子犬の目をしばたたかせて、身を乗り出してきた。
「…隠し味か知らないけど、入れたは入れた、かなぁ?」
「へぇ!何を何を?」
わくわくとしたその幼い顔を見て、ふと、果たしてこの少年に理解できるものだろうか、と疑問符が挙がった。
自問自答した挙句、
「ないしょ」
「えぇっ!どうして?」
「企業秘密ってことで」
私は人差し指をたててそう答えることにした。
返って来たのは、むすっとした顔と、その直後の「まぁいっか!」、そして、再び空になった皿だった。
"愛"