「よし、買えたな…っと」


買い出しメモに新しく斜線を入れる。残りはあと、半分くらいだろうか。


「次は何だっけ?」

「んーと……あ、大丈夫か?重くないか?」

「うん、平気っ」


彼女と二人で買い出し…なんてかなり久々だ。まぁここ最近はいろいろと忙しかったしな……。


「そっか?つらかったら俺が持つからな」

「ふふ。ありがと、ルーク」

「…ん。じゃ次、行くか!」



彼女は俺の何倍も、笑うのが上手いと思う。
一瞬にっこりとするだけで、どうしてこんなに幸せな気持ちになるのか、最初の頃は不思議に思ったぐらいだ。


重なる足音は最初こそ緊張したものの、今は一つ一つが心地よく感じる。



『ふぅ…』


休憩にベンチを見つけて腰を降ろすと、そんな息さえ重なったので、思わず笑いあった。



「晴れてて気持ちいいねー」

「あぁ、そうだな」

「久々にのんびり出来た気がする…」

「確かに。忙しかったもんな…
…あ、付き合わせちゃってごめんな」

「えっ?そんな、私がついて行きたかっただけだから、気にしなくていいよー」

「……そうか?」

「うん、凄く楽しいし!」

「…なら、よかった」


何度見ても、そのきらきらした笑顔は心臓の真ん中をきゅんとさせて、日だまりみたいなぬくもりを残していく。
…やべ、もしかして今、顔赤いかもしれない。


熱くなった頬を誤魔化すために、ふと見上げた先に。




「……………あっ!」

「?どうしたの?」

「なぁあそこ、あそこの雲っ」

「え…………あ!凄ーい!」



人差し指の延長線上、さわやかな青い空に流れて来たのは、くっきりとしたハート型の雲。



「わぁ…綺麗にハート型だね!」

「だよな、すげーな!」

「ふふ、可愛いー」


浮かぶふわふわしたハートは、何となく目の前の彼女にイメージがリンクした。


「……一緒に見られて、よかった」


「――――!」


「?…あれ、何か私変なこと言っちゃった?」

「……あ、いやいや!何でもないよ。
――……その、俺も、一緒に見られて……嬉、しい」



――わかってる。今のはその、見つけられてよかった、みたいな意味であって、お…俺と一緒に見られたからよかった、っていう意味では………あぁ、それが無償に悔しい。




「あーえと、あのさ」



そんな自分を誤魔化すために、そんなことを言いながら視線を戻せば、彼女の大きな丸い瞳が………


たぶんたまたまなのだろう、

―――上目遣いで、こちらを見ていた。



やべ。心臓うるさい。


待て、落ち着け俺!
そう願っても、もう俺は完全にパニックになっていろいろと大変なことになっている。空のハートが自分の心臓のように見えて、さっきの言葉がぐるぐるして、その瞳に吸い込まれそうになって、考えることが上手く出来なくて、もう頭の中がその言葉でいっぱいになって反響して―――!







「―――――――好きだ」

「……えっ?」



あ、っと思った時にはもう本音が出ていて。



ずっと大切にあたためてた気持ち。

いつか、もう少し先のいつか、伝えようと思っていた気持ち。



あぁ、もうワケわかんねぇ。

もう、いっか。

―――こうなりゃヤケだ!





「…………俺は、お前のことが―――――!」








スキ。
……やっと言えた。






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