学校の人気者だった君。
勉強はてんで出来なかった君。
いつでも真っ直ぐだった君。
突然、村から追放された君。
そして、帰って来た君。
「よっキオノ!!
へへっ、元気そうだな!」
笑う、君。
ずっと求めていた光景に、心が真っ白に戻ったような感覚。
世界を見た君の語る壮大な物語は、その空白をたくさんの彩りで埋めていくようだった。
ぴかぴかした笑顔の変わらない、君。
あぁ、やっとしあわせが帰って来たんだと思った。
けど、今。
君の掌にあるそれは、なんだろう。
「旅の間に作ったんだ、キオノに」
何十年も経ったわけではないはずなのに、随分大人びたその表情が放つそれは、なんだろう。
「よかったら貰ってほしい」
少し前までずっと欲しくて仕方がなかった笑みが、今この瞬間はとてつもなく辛かった。
「…いらない」
「え」
「手作りのペンダントも、ロイドの気持ちも凄く嬉しい。」
嬉しいよ。
でも。
「でも、それを受け取っちゃったら、
………ロイドはまた、またどこかへ行っちゃうんじゃないの?」
言いたくて言ったわけではない。けど、そっと窺えば君の顔はどんどん曇っていってて。
あぁ、嘘だとしても否定して欲しかった、なんて思ってしまう。そんなことされてもこの気持ちは晴れないのに。
「…ばれてる、か」
笑う、君。
あぁ、そんな顔させたいわけじゃないのに。そう、これは私の我が侭。困らせてるのは私の我が侭。何で言っちゃったんだろう。言わなきゃよかった。気づかなきゃよかった。馬鹿。私の馬鹿。
涙目を伏せる私の手を、はっと温もりが包む。
大きくて優しい君の手は、ペンダントを私の手に握らせて、それからまた温もりで私の手を覆った。
「…悪い。また行ってくる。
でも、必ず、帰ってくるから」
力強い、君。
君なんかよりずっと弱い私は、そんな君の胸に頭を押しつけることしか出来なかった。
「なぁ、そうしたら今度は、」
夢を見る。
君の背中を追いかける私。
振り返る君の隣を、様々な景色の中で歩けたら、どんなに楽しいだろう。
今は、夢を見ることで我慢するよ。
だから、いつか叶えてね。
「――――――今度は二人で、旅しようぜ」
旅立つ君と交わした約束