部屋に流れるなかなかにお粗末な鼻歌を聞き流しながら、俺はバスターソードの手入れを進める。
勿論鼻歌なんかをしているのは俺じゃない。
たまたま俺と同じ部屋で寛いでいたキオノは、突然俺から背を向けごそごそと何かやりだした。
それだけなら別に興味ない、と放っておいたのだが、やけにキーの高い気がするそのメロディが聞こえだしてからもうかなり経つ。
さすがに気になる。
耳障りだという意味で。
「何やってるんだ」
仕方なしに声を掛けるが、キオノは振り向きもせず「別に〜」と生返事だけを返してきた。
教えてくれ、と言って欲しいのかどうか知らないが、とりあえず鼻歌を止めてほしいという要件だけ伝えると、「…はーい」とどこか拗ねた声が届いた。
「………」
![](//static.nanos.jp/upload/a/adgrsw2/mtr/0/0/20111208222915.jpg)
バスターソードの手入れが一段落した。
が、部屋は静寂ではなくそのメロディに包まれている。
「♪〜♪♪〜」
「…………」
俺はバスターソードから手を離すと、随分浮かれた様子のその背中に忍び寄る。
彼女の足元に転がっていたのは、赤い毛糸玉だった。
「わ!びっくりしたぁもう」
漸く気付いたキオノの手には、二本の棒に赤い毛糸が絡まった謎の物体が握られていた。
「……何やってるんだ」
「何って、マフラー編んでるに決まってるじゃない」
さも当然のように言い放ったキオノの顔と、現実を訴え続ける赤とを見比べ、俺はため息をつく他無かった。
「……随分お粗末なマフラーが好きなんだな」
「何よ!私のじゃないもん」
「……そうか。いい迷惑だな、それ貰う奴は」
確かによく見ると数十センチくらいの不恰好な布になっていたそれを見て言うと、キオノは一瞬押し黙った。
その変化に視線を戻そうとすると、彼女はぐいっと背中をねじって俺から顔を背けた。
「ふーんだ!そうよねどっかの金髪チョコボ頭なんかにあげなくたって、別にいいわよね!」
「は?」
私は不機嫌です。という意思表示がありありを伝わってくるトーンで言い放つと、彼女はマフラー編み(という名の糸の絡み合い戦争)を再開した。
「どっかのでか過ぎる剣振り回してる奴は、当日プレゼントも貰わずバイク一人で乗り回して、凍えて風邪でも引いてればいいのよ!」
「………」
私の計画はこうです。と公言するような内容の悪口に、そういえばさっきの鼻歌メロディはクリスマスソングだったか、と俺は漸く思い出した。
「そーよ、はなっからあげる気なんてなかったもの!誰にあげるつもりだったんだっけなーっ。ティファ…ユフィ…ナナキ?はいらないか………あ!」
不機嫌だった声が、ぱっと華やぐ音に変わった。
「ヴィンセント!ヴィンセントにあげようっと」
「!」
決定された相手を発表したキオノが編むのを再開するより先に、俺は編まれたての糸をつまんで思いっきり引っ張っていた。
「っああぁ!」
びぃぃっと伸びる赤い糸。
が、さすが絡み合い戦争真っ只中。思っていたほど糸は取れずに、「ぎゅっ」という何かが締まるような感覚が俺の指に伝わってきた。
「クラウドの馬鹿ッ絡まっちゃったじゃない!!」
「元々絡まってただろう」
「うるさい!ほんとに間に合わないじゃない、そんなに私からのプレゼント欲しくないんだ!?」
この口振りからするとあくまで今までのは冗談だったらしいが、誰かの手にキオノの作った物が渡ると思うと……ましてやその相手が男となると、どうしても癪だった。
癪だ。それは認める。
が、
「……。プレゼントはともかく、それはいらないな」
正直にそう答えると、指し示した赤い塊が棒ごと顔に飛んできた。
未来の僕は僕を笑うだろうか
二つ分のヘルメットを磨きながら、俺は数日前の俺を笑った
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犬神シマ様より、FFクラウドのリクエストでした。
FF夢をサイトにあげるのは初めましてですね!書いてもあげられるようなものじゃなかったから←
ひょっとするとリクしたこと覚えてないかもしれませんが(アンケの方で言ってくださったので、ね!)日頃からの感謝を込めて書かせて戴きました。……これでも。←
本当にいつもありがとうございます。
これからも是非よろしくお願いします!
サイト運営、お互いに頑張りましょうねっ。
お持ち帰りはシマ様のみ可。お持ち帰りの際は直リンクでもコピペでも大丈夫ですっ^^*
この度はリクエストありがとうございました!!
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なんとなんと!!リクエストしてくださったシマ様より挿絵を頂きましたので、掲載させて戴きました…!
とってもかっこいいクラウドに感激です(^////^)うふふふ
シマ様、とっても素敵なイラストを本当にありがとうございました!!!
なお、イラストのお持ち帰りはご遠慮ください。
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