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私は安室さんが意図的に毛利さんのパソコンのパスワードを取得したような気がしてならなかったので赤井さんに相談すべく工藤邸を訪れた。
安室さんの特徴を伝えると彼はバーボンの可能性が高いと赤井さんは言った。
そして毛利さんのパソコンをハッキングした赤井さんはシェリーがベルツリー急行に乗る事を突き止めた。哀ちゃんの姿ではなく大人の姿で映っていたので組織に狙われる可能性が高くなり赤井さんと有希子さんが2人でシェリーの暗殺を阻止しに行った。ベルツリー急行に乗っていた怪盗キッドにシェリーに変装してもらい組織には作戦が成功したと思わせる事ができた。
しかし、この一件で安室さんがバーボンだと確定し私の心中は複雑だった。
バーボンが隣人だと赤井さんに告げると工藤邸に身を潜める事を勧められた。
正直あの人にはもう会いたくないので赤井さんの提案に乗った。
工藤邸の窓から夕日を眺めていたらふと昔を思い出してしまった。
夕日ってこんなに寂しかったかしら…
彼と見た夕日はもっと輝いていたような…
7年前に私は一時帰国した。でもFBI捜査官になる為に毎日必死で笑うことを忘れてしまった私はこのままじゃ和葉や平次に会えない。そう思って心が洗われるイベントでもないかと思って検索したところ東京のプラネタリウムがヒットした。なので大阪に帰る前に東京のプラネタリウムに1人で行った。そこで私はあの人と出会った。
***
やっぱりプラネタリウムはカップルだらけね…
辺りを見渡して虚しくなっていたら隣の席に男性が座った。
えっ?この人1人で来たの?
気になってついジロジロと見てしまった。
「男が1人でプラネタリウムってそんなにおかしいですか?」
視線に気付かれ話しかけられた。
「あっ、いえ…そんなことないですよ!私も1人で来てますし!」
「ハハッ。久しぶりに故郷の長野の星が見たくなったんだけど生憎俺は警視庁警察学校の下宿生でね。都内のプラネタリウムで我慢することにしたんだ」
「なるほど。私はミステリー翻訳家を目指してアメリカの大学に通っていて今日一時帰国したんです。大阪に帰る前に何かイベントに行きたいと思ってここに来たんです」
「そうなんだ。あっ、俺諸伏景光っていうんだ」
「私は志村葉月です」
「よろしく、葉月ちゃん!」
屈託のない笑顔で握手を求められて私の胸はときめいた。
「こ、こちらこそよろしくお願いします、諸伏さん!」
私はガチガチになりながら彼の手を握った。
「ハハッ。そんなに堅くならなくても。下の名前で呼んでよ」
「あっ、うん、景光君」
そんなやり取りをしていたらプラネタリウムが始まった。凄く感動したのは景光君が隣にいてくれたからに違いない。
「葉月ちゃん、この後食事でもどう?」
「是非!」
中華料理店で夕食を共にして次の約束もした。
遠山家に着くと平次も来ており私の頬が緩んでいる事を指摘された。和葉と平次にしつこく質問されたので私はプラネタリウムで出会った男性に一目惚れして次の約束もしている事を白状した。
そして約束の日。昼間から会い遊園地デートをした。アトラクションを一通り楽しむとあっという間に夕方になってしまった。最後はもちろん観覧車だ。
「わぁ、綺麗…」
景光君と乗った観覧車から見る夕日は今まで見た夕日の中で一番綺麗だった。
「葉月ちゃん…」
「何?っ…」
景光君の真剣な表情にドキドキした。
「好きなんだ、葉月ちゃん!俺と付き合ってください!」
私の答えは決まっている。
「喜んで!私も景光君が好き!」
私達は抱擁を交わしどちらからともなく唇を重ねた。
そして帰り際に3度目に会う約束をした。
「次会う時俺はもう警察学校を卒業している。だから覚悟しておいて」
「う、うん!」
艶っぽく耳元で囁かれて私の頬は夕日よりも真っ赤に染まったに違いない。
そしていよいよその日が来た。私達は街でデートを楽しんだ後そういう事をするのが目的のホテルに泊まった。私の緊張を解す為に景光は2人ともシャワーを浴び終えた後にベースを弾いてくれた。彼の伏目がちな表情にドキドキし穏やかな音色に酔いしれた。
「葉月、今夜は寝かせない」
「景光…」
彼からの優しくも激しい愛に溺れた。初めてだったから確かに痛かったけどそれよりも気持ち良さと悦びの方が大きかった。
もっとあなたといたかった。でも私は目的を果たす為にアメリカに戻らねばならない。
景光は空港まで来てくれた。
「景光…離れたくない…」
私は景光に抱きついて泣いてしまった。
「俺だって葉月と離れたくない。でも葉月には夢があるんだろ?その夢が叶ったら俺に会いに来てくれ!」
「うん、分かった…行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
景光が笑顔で送り出してくれたから私も不器用ながらもはにかんでみせた。
***
ねぇ景光、あなたは本当に死んでしまったの?
あなたの噂を聞く事さえ無理なんて辛すぎる…
ねぇ、いくら寂しいからって私隣人と関係持ってしまって…
しかもその相手が敵対組織の探り屋だっただなんて…
私はどうすればいいの?
教えてよ、景光…
バーボンの事は忘れて記憶の中のあなたと生きていくのが最適よね…
だってあの組織は両親の仇…
絶対に潰さねばならないのだから!
だから寂しい時は夢で会いに来てね!
私は今の自分の状況にピッタリの曲『願い事ひとつだけ』をプレイリストから再生した。