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12

久しぶり。

俺の事待っててくれた?

それとも俺の事なんて忘れて幸せにやってた?

どちらにせよこんなメール送ってゴメンな。

俺はもうあの世に行くしかないんだ。

その前にどうしても葉月に伝えたい事があるんだ。

葉月、今でも愛してる。

今まで一度だって葉月の事忘れたことなんてなかった。

このヤマが片付いたらまた会いたかった。

思いっきり抱きしめたかった。

共に未来を歩みたかった。

でもそれは叶わないんだ。

どうか幸せに。

本当にゴメンな。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「景光!お願い!出て!」

メールを見た私は即電話をかけた。だがコール音の後無機質なメッセージと機械音が聞こえただけで彼は電話に出てくれなかった…


「景光!景光!」

私はここが職場だという事も忘れて大泣きした。

「葉月!どうしたの!?」

「ジョディ…」

私の手から滑り落ちたスマホをジョディが拾ってメールを見た。

「葉月…」

ジョディは私を抱きしめてくれた。

私は彼女の優しさに甘えて涙が枯れるまで泣いた。



***



「ハッ!夢か…」

景光…

おっと、いけないいけない!今日は工藤邸で組織についての秘密会議だというのに…早く準備して出かけなきゃ!

「それにしてもなんであんな夢見ちゃったんだろう…」

そう思いながら工藤邸に着き間もなく会議が始まった。

私と赤井さんとコナン君は最近『ASACA』と『RUM』について調べている。そんな時にミュージシャンの波土禄道が17年前に作った曲に『ASACA』というタイトルをつけ新曲として発表する事が判明し、探りを入れる為に園子ちゃんの家の力を借りて波土さんのコンサートのリハーサルを見学させてもらう事になった。

会場に向かうと私は思わぬ人に出くわした…

なんで零がいるの!?

って大方組織でも波土さんの新曲の真意を確認する必要性が出てきたのだろう…

「あなたも来ていたんですね…沖矢昴さん…」

「えっと、あなたは確か宅配業者の方ですよね?」

「ええ…まあ…」

この2人の対面は非常にまずい…

それだけではない。零と腕を組んでいた梓さん絶対に偽物だ!梓さんはポアロの人気店員の安室透と自分が噂になったら炎上案件間違いなしだからと極力近い距離にならないように気をつけているし、この前ギターは弾けないと言っていたのに今日は弾けると言った。

間違いない。ここにいる梓さんは変装したベルモットだ。ならば早く昴さんを帰さないと!

コナン君に視線を送るとどうやら彼も同じ事を考えていたようだ。

すると男性の悲鳴が聞こえた。

悲鳴がした会場の中に入ると波土さんが首を吊っていた…

やはり今日も事件に巻き込まれてしまった…

いつものように目暮警部や高木刑事が到着して捜査が始まった。

波土さんの胸ポケットに『ゴメンな』の文字が入っていたので筆跡鑑定の結果を待つ事になった。

『ゴメンな』かぁ…

景光からのメールにも書いてあったなぁ…

しかも2回も…

だから今朝あんな夢見ちゃったのかなぁ…

昴さんが私の隣で名前と『ゴメンな』の文字を書いていると零が近づいてきた。

「左利きなんですね…」

「ええ、まあ…いけませんか。」

「気にしないでください。殺したいほど憎んでいる男がレフティなだけですから…」

零…赤井さんとの間に何があったの?

だが事件を解いている途中で零と昴さんが波土さんの曲で何が好きか盛り上がるという一幕もあった。

この2人が手を取り合えば組織を壊滅に追い込めるかもしれない。その為にも2人の間に何があったのか聞き出して和解させたい。

先程『ゴメンな』の文字を見た零の様子がおかしかったけど、現場を見つめている昴さんの様子もおかしい。

もしかして今回の事件に2人の確執に迫るヒントが?

そして今回も3人の名探偵により事件は解決した。しかし今回は自殺だったのだ。それを恋人だったマネージャーが、波土さんの元彼女の流産した子の為に、波土さんが自殺したという真実を彼の両親に知られたら申し訳ないという理由で現場を工作したという悲しい結末だった。

ちなみに『ASACA』というのは『朝、カフェで』子供の事を聞いたという意味だったらしい。

「そのハイネックこの場でめくりたい衝動に駆られますが今はやめておきましょう。いずれまた…」

零は昴さんにそう吐き捨てて梓さんに扮したベルモットとこの場を去った。

以前工藤邸で対峙した時の昴さんは右利きだったのに今日の昴さんは左利きだった事から再び赤井さんの変装だと疑い始めたらしい。

まあ私と一緒にいた時点で昴さんはやはり赤井さんだと疑うのは妥当だろう。

後で問い詰められたら私とコナン君と昴さんはホームズフリークでコナン君は頭がキレる彼によく事件の相談をしているという事にしておこう。

部屋に戻って夜も更けてきた頃、今回の事件と過去に自分の身に起きた出来事を思い出したら涙が出てきた。

すると呼び鈴が鳴ったので出ると零が来たので部屋に招き入れた。

「泣いていたんだろ?」

零は私を優しく抱きしめてくれた。

「零…」

「事件の真相が分かる前からなんだか悲しそうだったけど何かあった?」

それはあなたもでしょ?何かを思い出していながらも私の異変に気付いてくれたのね…

元恋人の事って今の恋人に話してもいいものなのかしら?

「まあ…『ゴメンな』の文字を見てちょっと昔の事思い出しちゃって…」

「好きだった男か?」

「うん…彼警察官だったんだけどもうあの世に行くしかないって最後のメールに書いてあって…」

「っ…葉月…」

「ねえ、お願い!死なないで零!私…もう愛する人を失いたくないの!」

私が無理なお願いをしたら零は困った表情で私の唇を自分のソレで塞いだ。

「ごめんなさい。こんな約束絶対に果たすなんて言えないわよね…今のは忘れて…」

「でも何があっても俺は葉月には笑っていてほしい。さっきの記者も言ってただろ?死んでもなお女を泣かすなんてバカな男だと。俺は何があっても葉月を泣かせたくないんだ…」

「零…私もあなたを泣かせたくない…あなただって辛い事沢山あったでしょう?私といることで少しでも心を和らげてほしい…」

「葉月…愛してる…」

「私も愛してるよ…零…」

そのまま私達は激しくお互いを求め合った。