×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

11

「バンドよ、バンド!」

零の安室透としての立ち振る舞いを久しぶりに見たくなってポアロに来たら園子ちゃんが仲良し3人組でバンドを組んで大会に出たいと言い出した。なんでも昨晩観た映画に感化されたらしい。なんというミーハー根性だ。近いうちにまた違うものにハマってバンドのことなんて忘れるんだろうな…

担当はとりあえず園子ちゃんがドラムで世良さんがベースで蘭ちゃんがキーボードらしい。あとはギターをどうするかという流れになった。

「ギターいた!」

園子ちゃんが梓さんに向かって叫んだ。

「で、でも私ギターなんて触ったことないし、そもそも女子高生でもないし…」

「そんなん制服着ちゃえば分かんないって!梓さんロリ顔だし、映画に出てきたバンドのメンバーの1人が梓だったし!」

ロリ顔って…嬉しくないよね…若々しいならともかく…

「ギターだってちょっと練習すれば弾けるようになるって!」

いや、それは無理。現に私だって高校生の頃にギターカッコイイなって思ってちょっとかじったけど全然ダメで挫折しちゃったし…

「んじゃ弾いてみろよ!」

ガラの悪い男2人組に園子ちゃんが絡まれてしまった。男のギターを園子ちゃんが弾いたら2人はゲラゲラ笑い出し園子ちゃんは涙目になった。頭に来た私がカウンター席から立ち上がって文句を言おうとしたら零が園子ちゃんに近づいた。

「貸して」

園子ちゃんからギターを受け取った零の演奏はプロ並みだったし何より伏目に色気を感じてドキドキしてしまった。

演奏を終えた零が黒い笑を浮かべながら男にギターを返すと2人ともそそくさと立ち去った。

「園子さんもビッグマウスはほどほどに」

「はい…」

零って安室透の時はホントに女性の胸キュンポイントを押さえているわね…ちょっと…いや大分心配だわ…

「ねぇねぇ!安室さん私達のバンド入ってよ!JKプラスイケメンバンドもアリなんじゃない?」

「それはちょっと…目立つのはあまり…」

そりゃ組織に潜入する公安警察だものね…てかその見た目で目立たない方が無理なような気もするけど…

「じゃあ葉月さんボーカルとしてどうですか?和葉ちゃんから葉月さんの高校の文化祭のコントで葉月さんが歌うシーンで下手かって会場中がズッコケるのかと思いきや上手すぎて会場中がスタンディングオベーションしたって聞きましたよ!」

「マジ!?是非とも入ってよ!」

「いや、高校生の頃はそういうの楽しかったけど今はもう目立つことをするのは恥ずかしいな…」

私だってFBI捜査官だし…

「練習くらいなら見てあげますよ。ねっ、葉月さん」

「えっ?私も?まあいいけど…」

すると零がこっちに来てからずっと彼を睨んでいた世良さんが口を開いた。

「なあアンタ、ボクとどこかで会ったことないか?」

「いや、今日が初めてだと思いますけど…」

えっ?何この殺伐とした空気…

浦川芹奈さんが起こした事件の時にニアミスしたけど事情聴取は別々だったから会ってはいないだろうし…となるといつ?



***



そして私達は貸しスタジオにやってきたが部屋が満室だった為ロビーで待つことになった。

その間にも世良さんがベースでドレミを奏で始めた。女の子なのにその伏目に零とはまた違う色気を感じてドキドキしてしまった。

「まあ兄貴の友人に教わったのはドレミの単音くらいだけどね」

「ベースを教えてくれたその男…顔覚えてます?」

「まあなんとなく…どうして分かったんだ?その友人が男だって…」

「まあなんとなく…」

零と世良さんの意味深なやり取りが終わったと思ったら隣の席のガールズバンドが揉め出した。

程なくして隣の揉め事が終わると園子ちゃん達の練習する曲が沖野ヨーコの『ダンディライオン』に決まり今度はボーカルを決める事になったけど候補がいなかった。

「蘭君の彼氏の工藤新一君はどうだ?」

世良さんが提案すると蘭ちゃんと園子ちゃんが却下した。しかもコナン君まで音痴だと言われている。まあ同一人物なのだが…

そんなやり取りをしていたら上の階から悲鳴が聞こえ駆けつけると先程揉めていたガールズバンドの1人がドラムの上で絞殺されていた。

通報すると目暮警部や高木刑事が到着して捜査が始まったので私達はロビーで待機している。

「どうしたの?世良さん」

「あの人達を怪しんでるの?」

「あっ、いやギターケース背負ってる人を見ると思い出すんだ。4年前、プラットフォームに佇むギターケースを背負った秀兄をな」

って事はこの子赤井さんの…だから以前ダニーズで会った時初対面のはずなのに会ったことあると思ったのね…赤井さんに似ていたからそう勘違いしたんだわ…

「その時秀兄の連れの男が『君、音楽好きか?』って言ってベースを教えてくれたんだ」

「じゃあその人、お兄さんの音楽仲間だったんじゃないの?」

「それはどうかなぁ…その人がベースを入れてたのはソフトケースなのにベースを取り出してもピンと立ったままだったから…」

世良さんが考察モードに入った。

「もしかしたらベースはカムフラージュで、別の硬い何かが入っていたのかも…」

ライフル…赤井さんいやおそらくライといたならまず間違いない…

「その人の名前聞いた?」

「聞いてないけど後から来た別の男がその人の事こう呼んでたよ…『スコッチ』ってな…」

スコッチ…ライやバーボンと同じくウィスキーの名…やっぱりその男組織の…

「その後から来た男、帽子を目深に被ってたから顔はよく見えなかったけど、似てる気がするんだよね。安室さん、アンタにな…」

「人違いですよ。そんな昔話より今ここで起きた事件を解決しませんか?」

そして事件は3人の名探偵により解決した。犯人はキーボードの女性で動機は自殺したボーカルの女性の復讐だったのだが、自殺というのは勘違いでボーカルの女性は子供を助ける為に車道に飛び出して車に轢かれたのだった。

「赤井秀一って言うんだ!カッコイイだろ!」

やっぱり…

帰り道に世良さんが赤井さんの妹だと確定した。

赤井さんの名を聞いた零の表情はやはり怒りに満ちていた。

これはただの勘だけど零が赤井さんを憎む原因となった『彼』はおそらく世良さんにベースを教えたスコッチというコードネームを持っていた男。

この勘が当たっていたと分かるのはもう少し先の事。

そしてその時私は知る事になる。ホテルで私にベースを聴かせてくれた景光がスコッチだったと…