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非常にマズい状況となってしまった。
なんとバーボンが沖矢昴イコール赤井秀一だと突き止めてしまったのだ。
バーボンは銀行強盗に巻き込まれた男性に変装して少年探偵団とお花見中だったジョディに近づいてこっそり盗聴器を彼女の服に仕掛けて赤井さんの情報を入手したのだ。
次にバーボンは杯戸中央病院にて高木刑事から水無怜奈が入院していたという噂が流れていた事と楠田陸道が所有している車の中から血痕が見つかったという情報を入手した。
その後彼はジョディの友人を怪我させて杯戸中央病院に送ろうとしたが、その女性が公園の階段から何者かに突き落とされ結果的に杯戸中央病院送りとなった。安室透として事件を解決した後バーボンは杯戸中央病院の玄関でキャメルに罠をかけて楠田が拳銃で頭を撃ち抜き自殺したという重大な情報を吐かせたのだ。その方法とはまず自分がキャメルに嫌味ったらしく迫り、キャメルがジョディに変装したベルモットに連れ戻され情報を漏らしていないか確認を取られると、安心しきったキャメルがあの事は喋っていないと具体的な内容をつい言ってしまうという巧妙な心理トリックを使ったものだった。
そしてもう一つ…コナン君がバーボンの正体を公安警察官、通称ゼロだと疑い赤井さんも潜入していた頃からそうだと思っていたらしくツテを使って調べたところ…警察庁警備局警備企画課所属の降谷零だという事が判明した。なのでこちらも決して不利ではない。
バーボンが調べれば赤井さんの死後に突然工藤邸で居候を始めた沖矢昴を疑い、乗り込んでくるだろうという事になり私達は敢えて彼に計画を実行させ欺きその鼻を明かす事にした。
という事でマカデミー賞の受賞式を控えている工藤優作さんに沖矢昴となってもらい別室でモニタリングしているコナン君が代わりに喋る事となった。その受賞式に出るのは工藤有希子さん。赤井さんが生きているかもしれないと疑い始めたジョディは案の定キャメルを連れて来葉峠に向かった。なので赤井さんは2人にバレないように車に乗り込んだ。私はというとコナン君の隣にいる事しかできなかった。
予想通りバーボンは宅配業者だと偽って工藤邸に乗り込んできた。
現在バーボンと沖矢昴の会話をモニタリングしているのだが何が起こるか分からないのでとてもヒヤヒヤしている。あとバーボンの話が長くて正直殴りたい気分だ。
早く決着をつけてほしい…
暫く傍観しているとやっと赤井さんがバーボンに電話で話し始めた。
−久しぶりだな、バーボン。いや今は安室透君だったかな?君の連れの車をおしゃかにしたお詫びに細やかな手土産を用意した。楠田陸道が自殺に使用した拳銃だ。入手ルートを探れば何か分かるかもしれん。そういう事は我々FBIより君らの方がはたけだろう?−
−まさかお前俺の正体を!?−
−組織にいた頃から疑ってはいたがあだ名がゼロだとあのボウヤに漏らしたのは失敗だったな、降谷零君。ゼロとあだ名される名前は数少ない。調べやすかったよ。おそらく俺の身柄を奴らに引き渡し大手柄を上げて組織の中心に食い込む算段だったようだがこれだけは言っておく。目先の事に囚われて狩るべき相手を見誤らないでいただきたい。君は敵に回したくない男の1人なんでね… それと、彼の事は今でも悪かったと思っている…−
最後の一言を聞いた瞬間バーボンは酷く驚き表情を歪め唇を噛み締めた。
敗北を認め憔悴しきった表情のバーボンは工藤邸を去っていった。
「あー、ちかれた…」
「お疲れ様、コナン君」
そして部屋に入ってきた優作さんは沖矢昴の変装を解き、勝手な事ばかりしてと息子から愚痴られていた。
「君はこれからどうするんだね?」
「もうあの人に私達を捕まえる事はできないですし、メゾンモクバに戻ります…」
「ホー」
「優作さん…私…あの人は敵の筈なのに…憔悴しきった表情を見たら胸が締め付けられて…おかしいですかね?」
「どうだろう…とても厄介な難事件のようだから私には解けないな」
「そうですか…あの、ご協力ありがとうございました。こちらに住まわせていただけた事も感謝しています。では失礼します」
私はあの人に無性に会いたくなって…今日彼が戻ってくるかも分からないけれどとりあえずメゾンモクバに戻った。