C
今日も精神科を訪れた。
「あなたの将来の夢は何ですか?」
「それはもちろん夫と…」
答えようとしたその時私に電話がかかってきた。内容は私に自分と同じ悲しみを味わせる為に透さんを殺すというものだった。
「続けてください」
「夫と…平和に暮らしたかったけど…もうおしまい!私は彼の為に戦う!」
「風見さん、出動お願いします!」
先生と入れ違いに男性が入ってきた。
「そうはさせない!」
「どいて!」
私は男性を蹴り飛ばして精神科を後にした。電話で指定された時間までまだ余裕がある。私はとある場所へ向かった。
「沖矢昴さん…いえ、赤井秀一さん…」
「やはり記憶喪失は演技だったな。おまけに俺の正体も見抜いていたとは…」
「不良高校生を制圧しているあなたを見て昔見た戦い方に似ていると思ったから。そして…江戸川コナン君…あなたの正体は…工藤新一君でしょ?あなたの失踪時期と毛利探偵が有名になった時期を考えればすぐにたどり着いたわ」
「ええ、僕が工藤新一ですよ。葉月さんはこれから何をするつもり?」
「バーボン…いえ、降谷さんを守る為に私は彼の前から姿を消すわ」
そう言って降谷さんに宛てた手紙を新一君に渡した。
「これを降谷さんに渡せばいいんですね?」
「ええ、お願い。じゃあね。次会う時はきっと組織は壊滅しているわ。あなた達と降谷さんがいれば勝てるわよ」
私は工藤邸を後にして降谷さんを助けに向かった。
***
横浜港に泊まっている現在運行中止になっている豪華客船に俺はやってきた。
「よくぞ来たなバーボン」
「約束通りデータを持って来ましたよ」
「フフフ、残念だったな。俺達の本当の狙いはデータではない。お前の命だ!」
「やはりそうでしたか。もちろんこのデータは偽物です。僕の命奪えるものなら奪ってください」
俺は雑魚共を次々と倒した。
「降谷さん!」
「葉月…とうとう演技は終いか…」
「あら、演技だって気付いてた?」
「薄々な…」
「どうせ大人しい性格のメグの方が従順で可愛くて俺色に染めたいとか思ってたんでしょ」
「俺色に染めるか…なかなか良い響きだな…」
そんな話をしながらも俺達は互いの背中を預けながら共闘した。
「ねえ、あなたの下の名前何て言うの?」
「零だ。あだ名はゼロ」
「へえ、ゼロ所属のゼロか。でも私は零って呼びたいわ。ねえ、零〜」
「猫撫で声を出すな。ぶち犯したくなる」
「零ってちっとも紳士じゃないね。よくも安室透を演じられるわね」
「それはこっちのセリフだ。本来のお前はとんだじゃじゃ馬だな」
「あら、じゃじゃ馬は嫌い?」
「いや、それはそれで調教し甲斐がある」
「あなたストレス溜まってる?」
「この仕事してて溜まらない方がおかしいだろ」
「確かに」
全ての敵を倒した。リーダー以外は…
「おい!葉月!」
「さよなら、零…元気でね…」
葉月はエレベーターにリーダーを押し込んで一緒に上っていってしまった。
「クソ…」
するとラムから着信があった。どうやらここに来るらしい。
いよいよ俺の手で愛してしまった女を殺す時が来たようだ。
***
私は客船の屋上で男と戦った。すると男は屋上から海に落ちそうになった。どうせ手遅れだというのに私は男を助けた。
「何故だ?」
「自分でトドメを刺したいからに決まってるでしょ…」
嘘だ。私は本当は人殺しなんてしたくない。
孤児院で育った私は自分と大切な人を守る為に沢山勉強して武術も身に付けたのだ。
アメリカの大学に通っていた頃、人違いで殺されかけたFBI長官のジェイムズ・ブラックを助けた事がきっかけで私はFBIに入った。FBIの任務をこなす度に、自分は世界平和に貢献しているという感覚を覚えた。しかし、組織に潜入してからは自分のしている事を疑問に思った。だからこそ記憶喪失のフリをして愛している人の側にいる道を選んだのだ。それももう終わりだけど…
「アマレット!」
嗚呼…もっとあなたの側に居たかった…
「バーボン…」
私が彼に合わせて偽りの名を呼ぶとバーボンの後ろから来た男がリーダーを射殺した。
「さあ約束通り殺せ、バーボン…」
「了解…」
バーボンは私に銃を向けた。
「愛しい男に殺されるなら本望だわ。苦しまずに逝きたいからちゃんとここを狙って…私を愛しているなら早く私を楽にして…もう怯えながら暮らすのは散々なのよ…」
ライダースーツの上着をめくって撃つ位置を指示した。
「さよなら、アマレット…今度は地獄で会いましょう…愛していましたよ…」
私はバーボンに撃たれて海へ真っ逆さま…
***
拝啓 降谷様
あなたがこの手紙を読んでいるという事は、私は表向きでは死んだ事になっているということですね。
現在はアメリカにてFBIの任務をこなしています。ですが一生続ける気はありません。
例の組織を無事壊滅させる事ができたら、私はFBIを退職します。そしたら私をあなたの本当の奥様にしてください。
あなたのせいで私の胸に手術痕が残ったので、あなたにしか私を抱けません。責任取ってくださいね。
いつまでも待つのは寂しいので早く迎えに来てください。
愛しています。
志村葉月
「ああ、待ってろ…葉月。今度こそ本名を指輪に刻もうな」
fin.
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