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水無怜奈を組織に返す。それが新一と赤井さんの作戦だった。水無怜奈の正体はCIA諜報員の本堂瑛海だったのである。つまり瑛祐君の実の姉であり、イーサン本堂の実の娘という事だ。イーサン本堂は組織に正体がバレそうになった娘の為に自決したというのが真相だ。FBIは組織からの情報を彼女から横流ししてもらう為にわざと返したのである。
私はようやく病院を引き上げることになった。
「出口まで送ろう」
「ありがとう赤井さん」
「いいかげん名前で呼んでくれないか…よそよそしいだろ…」
「秀一…なんだか照れるわ…」
「アメリカで生活していたんだろ?」
「そうだけどさ…やっぱり特別感があるから…」
「面白い奴だ」
「何よもう」
「葉月、気をつけろよ…」
「秀一もね。じゃあまたね」
「ああ、またな」
この時の私は秀一の身に起こる事を予想していなかった。
日常に戻った私はジョギングをしていた。今まで運動は苦手だったがFBIと関わる以上少しくらいは体力をつけないといけない。
「あっ、あなたはアンドレ・キャメルさん」
「どうも。赤井さんの恋人になった方ですよね?」
「ええ、志村葉月です」
キャメルさんもジョギングをしていた。怖い見た目と違って少々気弱な性格でジョディ先生にゴリラ呼ばわりされた時はショックを受けていた。
「すみません、ちょっといいですか?」
「あれ?千葉刑事?」
「葉月さん!?この人とは知り合いですか?」
「ええ、まあ…」
「ちょっと来てもらおうか」
「えっ、ちょっと…」
千葉刑事がキャメルさんを連行した。何があったのか気になって私もついて行った。
近くのホテルで芸能プロダクションの社長が殺害され、新一が日本語の話せる外国人が怪しいと警察に助言した為キャメルさんは容疑者の一人となってしまった。
すると秀一から電話がかかってきた。
「もしもし」
「キャメルの事聞いた。ジョディがそっちに向かうからなんとかしてくれるだろう」
「良かった。キャメルさんと偶然会って話していた時に警察が来ちゃったから何故FBIと知り合いなのか聞かれて、とりあえずひったくりに遭った時に助けてもらって、FBIだと知っているのは彼が犯人を取り押さえた時に落としたFBIの証明書を見たという事にしておいたけど大丈夫かな?」
「ああ、それで問題ない。ところで葉月…」
「何?」
「信じて待っていてくれ…」
「デートの事?もちろんよ。あなたはどんなに忙しくても約束を忘れたりしないでしょ?じゃあまたね」
「ああ…」
秀一の様子がおかしい事が気になりつつも私は目の前の事件について考えた。
そして新一の名推理により事件は解決した。犯人は過労死した婚約者の敵討ちをしたのだった。
帰宅した私はテレビをつけた。来葉峠で黒のシボレーが炎上しており、中で20代後半から30代前半の男性の遺体が見つかったというニュースが流れてきた。
まさか…
まさか…
そんな訳ない!
私は不安になりながらも事件に巻き込まれた疲れが出て眠った。
翌日、私はジョディ先生のマンションに呼ばれた。
そこで信じられない話を聞いた。
「嘘でしょ?あの秀一が…」
「警察に指紋を調べてもらったから間違いないわ…」
「そんな…どうしてどうして!?待っていてくれって言ってたじゃない!?」
私は涙が止まらなかった。
それは彼と元恋人同士だったジョディ先生も同じだった。
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