キミがいれば | ナノ

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水無怜奈が杯戸中央病院に入院して間もなく彼女にそっくりな本堂瑛祐君という男子生徒が帝丹高校に転入してきた。

「赤井さん、どう思います?」

私は杯戸中央病院で赤井さんに相談した。

「偶然とは思えないな」

赤井さんは彼について調べるようだ。

ドジだが賢く、時には事件解決に導く助言を新一にしてきた瑛祐君を、新一は不審に思い、服部君にも協力してもらって、瑛祐君の父親がCIAだということが判明した。

「瑛祐君の父親は大阪のお好み焼き屋さんでよく仕事の話をしていたみたいです。カンパニーに勤めていて、ある日、潜ると仲間に言ったそうです。仲間はGood luckやらNo pain, no gainやら言ってきたらしいですよ」

「話は見えてきた。その男は例の組織に潜入したCIAの諜報員だ。名字が本堂と分かっていれば調べるのは容易い」

予想通りすぐにフルネームがイーサン・本堂だと分かった。彼は30年前に入国し、3年後に日本人女性と結婚したのだ。

「瑛祐君は水無怜奈にそっくりな姉を探しているらしいのですが…」

「その姉が水無怜奈本人だと?」

「いいえ。瑛祐君はO型で、昔お姉さんから輸血を受けています。O型はO型からしか輸血を受けられないので、お姉さんもO型になります。ちなみに水無怜奈は爆発事故を扱った報道番組でAB型だからと言って、中継を他の人に変わってもらって献血しに行きました」

「となると少年の姉と水無怜奈は別人ということになるが…」

「もし、瑛祐君が輸血される前に白血病による骨髄移植でAB型になり、その事実を知らないのだとしたら…」

「2人は姉弟だな」

そして瑛祐君が幼い頃父親と電話していた時に電話越しに聞いたプッシュ音と同じ音を押している人を杯戸中央病院で見つけたらしい。そのプッシュ音は予想通り『七つの子』。瑛祐君は組織のボスのメールアドレスを知ってしまったのだ。何よりも組織のメンバーが杯戸中央病院に探りを入れていることは明白だ。

焦った私と新一とFBIは杯戸中央病院に集まった。

看護師さんの話と新一の推理により、組織のメンバーである可能性の人物は3人にまで絞れた。

そして新一が3人に探りを入れた結果、組織のメンバーは頸椎捻挫で入院中の楠田陸道だと推理した。

その夜、楠田はナースステーションで写真を撮っていた。それをFBIが問い詰めると車で逃げた。赤井さんのシボレーがあと少しで追いつきそうになったところで、なんと楠田は車の中で自身の頭を撃ち抜いてあの世へ逝ってしまった。

組織のメンバーは随一組織へ連絡を取っているはずだ。となると杯戸中央病院に潜入している仲間からの連絡が途絶えた瞬間、水無怜奈の居場所はバレたも同然だ。

組織が乗り込んでくるかもしれないこの状況を赤井さんは嬉々としているように感じる。

ジェイムズさん曰く、亡くなった恋人の仇が取れるからとのことだ。

赤井さんは諸星大という偽名を使って組織に関わる女性に近づき、ライというコードネームをもらって5年前から2年前まで潜入していたそうだ。2年前にとある捜査官のミスで潜入が途絶え、FBIを招き入れたとしてその女性は処分されたらしい。

その女性の名は、宮野明美。哀ちゃんのお姉さんだったのだ。

明美さんは利用されていることに勘付きながらも赤井さんのことが本気で好きになってしまい離れなかったそうだ。

そして最初は彼女を利用していただけだった赤井さんもおそらく今は…

「私ね…シュウが組織に潜入する前まで彼と付き合っていたのよ…」

「潜入捜査の為に宮野明美さんと付き合うからと別れを告げられたんですね」

「そうよ。私は別れたくなかったけど、シュウが2人の女性を同時に愛せるほど器用な性分じゃないとか言っていたわ…」

「なんかとても赤井さんらしい…」

どうやら私の恋は叶いそうにない。だからといって気持ちを伝えないまま離れ離れになるのだけは絶対に嫌。

新一と蘭ちゃんは側から見ていてとても辛い。

「ジョディ先生、私は当たって砕ける!」

「あら、砕けるとは限らないじゃない?」

「もうどうにでもなれ!言ってくる!」

私は屋上へ向かった。

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