10
「ただいま!」
「有希子さん、久しぶり!」
「葉月ちゃん会いたかったわ!」
有希子さんは私の頬にキスをした。
「新ちゃんから聞いたわよ。あなた昴さんの正体分かっちゃったんだってね。そりゃそうか。彼氏なんだものね」
「まあね」
「有希子さん、ベルツリー急行の件よろしくお願いします」
昴さんの姿をした秀一が自室から玄関に出てきた。
「ベルツリー急行?」
「じゃーん!パスリングよ!」
「えっ、2人で行くの?」
「誤解しないでよ。組織が哀ちゃんを捕まえるべく乗り込む事が分かったから私達は阻止しに行くのよ」
「そういう事か」
「葉月、今回は奴らと対面する可能性が高い。お前は来るな!」
「うん。行かないよ。だってそんな列車に乗ったら12人に刺された男の遺体を見る羽目になりそうじゃない…」
「それはオリエント急行だろ。まあ来ないならそれでいい」
そして新一と怪盗キッドと有希子さんと秀一の連携プレイにより、哀ちゃんが列車で爆死したと見せかけることに成功した。これで哀ちゃんがもう命を狙われる事はないだろうが…
「はあ…」
「何よ。私が助かったのがそんなに嬉しくないわけ?」
阿笠博士の家で溜息を吐いたら哀ちゃんに睨まれてしまった。
「違うよ…ただ安室さんがバーボンだと確定しちゃったからね…」
「あのね…水無怜奈さんからバーボンが動き出したってFBIに連絡があったんでしょ?その後で明らかに毛利小五郎に接触してきた人物なんだから疑って当然だと思うけど…」
「確かに…はあ…」
「まさかあなたバーボンが好きなの?」
「違うよ!ただせっかくできたばかりの友人だったから…」
数日後、私が元気がないと知った園子ちゃんが伊豆高原でテニスをしないかと誘ってくれた。スペシャルコーチが来るからお楽しみにって言っていたけど誰の事だろう…
そしてテニスコートに着いたらなんと安室さんがスペシャルコーチとして来ていた。
体調不良でポアロを休んでいると聞いていたけど…
バリバリ元気にテニスしているし…
ジュニア大会での優勝経験もあるとか…
「危ない!」
安室さんが言った時には既に遅く、新一の頭にラケットが直撃してしまい、私達は桃園さんという新一にラケットをぶつけた女性の別荘に招かれた。
安室さんによる新一への応急処置は完璧だった。
彼は本当に組織の一員なの?やっぱり私は彼を信じたい…
そして皆で冷やし中華を作り始めた。おかげで安室さんへの想いを少し忘れられたかも…
しかし、楽しくやっていた筈なのに桃園さん達の仲間の1人である石栗さんが殺されてしまい、私は人生で2度目の死体発見にまたもや気絶してしまった。
「あれ?」
「気がついたようですね。良かった…」
「安室さん…私はいったい?」
「石栗さんの遺体を見て気を失ったあなたをこのお客さん用の寝室まで運んだんですよ」
「ご迷惑おかけしました…で事件は解決したんですか?」
「ええ、犯人はこの別荘の持ち主の桃園さんで、動機は想いを寄せていた瓜生さんという男性を自殺に追い込んだ事による恨みでした…」
「復讐かあ…」
「皆そろそろ帰るみたいなので葉月さんも支度してくださいね」
「はい…」
散々な休日だったけど私は安室さんの事で一つの可能性が浮かんだ。ただの願望かもしれないけれど…
prev / next