人生幸福論 | ナノ


prologue  








“なあ、”




一人の青年が声を発する。


窓の縁に座り、外へ向いていた赤い瞳が青年の声に反応し青年の方へ向いた。


“俺さ、きっと生まれ変わってもお前らと一緒だと思うんだよね。”


青年は真面目くさった顔で彼へと告げる。


告げられた彼は、眉根を寄せて彼を見た。その顔にはありありと、何をバカなことを言っている。と告げている。


“いや、本当に。そう思うんだ。”


青年は組んでいた腕を解き、彼へ向きなおる。青年の鷲色の瞳は確かに真剣なまなざしだった。この青年は本当にそんなバカげたことを思っているのだ、と彼は思った。


“だから、きっと、生まれ変わって初めて会う時は、久しぶり。って言うよ。”


青年は満面の笑みを浮かべた。


彼はふんと鼻を鳴らす。小ばかにした顔だったが、青年は気にすることなく鼻歌を歌い出す。


“あら、何の話をしているの?”


二人しかいなかった空間に風が入ってくる。


開かれた扉から、二人の女性が顔を出した。


“いや、今ね。”


青年が二人に今しがた話していたことを聞かせる。その言葉に二人は目を瞬かせ顔を見合わせた。


“ふふ、とても、おもしろいわ。”


“あ、バカにしてるね?”


“そうじゃないわ。でも輪廻転生。記憶なんて持っていないもの。きっと生まれ変わっていたとしても覚えていないわ。”


彼女は至極真面目に答えた。


その真面目な返答に彼は再び鼻を鳴らす。


“そんなことないよ。俺は覚えている。だって、君たちに出会ったことは、俺の人生において最高の幸運だったのだから。”


青年は胸を張った。


その様子に三人は肩を竦め、しかし、温かく青年を見つめる。


誰もが同じ気持ちだった。出会えたことは奇跡であり、運命であり、宿命であり、幸運であった。


“だから、きっと来世でも君たちに会えるよ。”


青年は笑った。


満足げに。


それを彼らもみな温かい気持ちで見つめていた。


だって、彼らも同じ気持ちだったから。出会えればいい。またこうしてすごせればいい。永遠に。







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