人生幸福論 | ナノ


25:匿名の手紙  




俺たちは梟小屋へ足早に向かいながらアリィに今持っている情報と、俺たちの考えを話して聞かせた。


梟小屋では、まだ昼間だということもあり、ほとんどの梟が止まり木でじっと眠っている。


サラがピィと指笛を鳴らすと一羽の梟が音もなく飛んできてサラの腕に止まった。


「サラのフクロウ?」

「まさか。そんなことしたら、匿名希望にした意味がない。学校の梟だ。ダンブルドアに届けてくれ」

「あ、もしかしたら、途中ですれ違っちゃうかもしれないから、気を付けてくれよ?」


梟の首の付け根をかいてやると、目を細めたそのフクロウはしっかり手紙を足に括り付けるとすぐさま飛び立ってくれた。


「上手くダンブルドアが捕まるといいけどな」

「微妙、だな」

「だよなー」

「なんにせよ、次の行動に移りましょう」

「一番簡単なのは、4階の例の部屋の前で待ち伏せすることじゃねえか?」

「それでは就寝時間まで待ちますか?」

「クィレルに直接接触を持つという手もある」

「危険すぎます」

「あと、ハリーたちをどうするか、だな」


ハリーは、ヴォルデモートから生き残った伝説の男の子だ。そして、おそらく彼の額の消えない傷はヴォルデモートの呪いか何かだ。つまり、彼とヴォルデモートのつながりでもある。だから、危険、つまりヴォルデモートが近づくと傷跡が痛むのだろう。


だとしたら、今回のこともヴォルデモートが関わっている可能性が高い。


それなのに、ダンブルドアはどこかハリーたちに、というよりハリーにヴォルデモートと接触させようとしているように思える。


それはなぜか。ハリーならヴォルデモートを倒せると思っているから?生き残った男の子とはいえ、まだ11歳だ。学力ならハーマイオニーの比ではないし、魔法も優秀ではあるが、とてもヴォルデモートと渡り合えるとは思えない。


それに、ヴォルデモートがのこのことホグワーツに姿を現すのかどうかも微妙だ。いくら賢者の石のためとはいえ、森の中とホグワーツの中枢とではわけが違う。


ということは、今はまだヴォルデモートと対戦するようなことにはならないと思う。


なら、何のために。


何のために。


何かに利用するために?


「……タヌキ爺だな」

「何がだ?」

「ダンブルドアだ」

「それは前からわかっていたことでしょう?気のいいただのお爺さんがホグワーツの校長などやっていられるわけがありません」

「ダンブルドアの真意はわからないけれど、透明マントを戻したことや、溝の鏡を見せたことなんかから考えるとダンブルドアはよっぽど今回の件にハリーを関わらせたいらしい。ハグリットにしても、まあ彼はなんの演技もしていないだろうけど、うまくハリーの好奇心を刺激しているよな」

「ですが、そんなのは個人の性格によるもので、そこまで計画などできないのでは?透明マントはともかく、溝の鏡を見つけるかどうかはかなりの確率ですよ」

「それも意図的だとしたら、本当におもしろいのだがな」

「サラ、軽口はよしてください」


アリィに咎められ、サラは肩をすくめてみせた。


「じゃあ、仮定として、今回の件をダンブルドアがポッターに解決させたがっているとして、ポッターたちもその道筋通りに動こうとしている。まあ、中の罠をあいつらがどこまで解けるのかは知らないが、うまく解け、賢者の石までたどり着けたとして、だ。俺たちはどうする?」


俺たちの間に沈黙が降り立つ。


ハリーは死ぬ覚悟をしていた。そして、絶対にヴォルデモートの好きにはさせないという強い闘志にも似た正義感をその目に宿らせている。


覚悟の目だ。


ハグリッとの話では、先生たちがそれぞれいろいろな魔法を施してあると言っていたのだし、そう簡単に解けるものではないだろうが、ハーマイオニーや本番に強いであろうロンとハリーがいるのだ。そして何より、今回の件にはダンブルドアの息がかかっている。


だとしたら、最初にも思った通り、手助けではなく、見守る方向でもいいのかもしれない。


ダンブルドアの道筋に添わせるのは、なんとなく癪に障るが、今はそれが最善のように思える。


「…今回は、見守る、ことにしてもいいのかもしれない」

「いいのか?それで」

「うーん…、あまりにもところどころにダンブルドアの息がかかっているような気がしてきて、正直、俺たちが先回りして手をだしていくと勘付かれそうな気がしてならない」

「そこは同感ですわ」

「だが、ポッターたちが心配なんだろう?」

「うん」

「もう、お前がついて行けばいいじゃないか。保護者役としては十分だろう」

「えー、それ、俺が大変なだけじゃないか」

「もともと、グリフィンドールが持ち込んだ問題だ。お前の監督寮だろう」

「ちょ、ここでいきなりグリフィンドールに戻すなよ」

「ですが、私もそれで賛成ですわ。犯人に遭遇したとしても祐希ならうまくことを運べるでしょうし、祐希一人なら、私たちのことがバレる心配もないでしょう。最悪、適当に気絶したフリでもしていれば、ごまかせるんじゃないですか?」

「なんだよ、その適当なのは」

「正直、子供である私たちがいくら犯人を見つけ、突き出したとしてもそれを信じてもらえるとは思えません。だったら、現行犯で捕まえることが重要ですよね。つまり、今夜動くというポッターたちについて行けばすべてうまくいくんですよ」

「それ、俺一人が大変になるじゃないか」

「もちろん、私たちも後方支援はいたしますよ?」

「後方支援?」

「あら、創設者の部屋の隠し機能を忘れてしまったのかしら?」

「あ……」


サラの方を見ると、彼もあっけにとられていた。おそらくサラも忘れていたのだろう。正直遊び半分で作ったその機能は、前世の時に使われることは無かった。


だから、すっかり忘れていたのだ。


「あー…、じゃあ、そうするか」

「そうと決まれば、祐希はもう寮に戻ってポッターたちと合流した方がいいでしょう。私とサラは就寝時間後に部屋に集合でいいですね?あと、その第三者についても気を配っておきましょう」

「ああ。わかった」

「了解。頼むぜ?二人とも」

「ああ云いましたが、今は貴方もただの生徒です。十分気を付けてくださいね?」


アリィの言葉に、俺は深く頷いた。


そして、俺たちはそれぞれの寮へ戻り、俺は無事にハリーたちご合流。そして、再び一緒に行くことを伝えた。


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