人生幸福論 | ナノ


22:突っ込まれた首  




それからのハリーはとても大変そうだった。


クイディッチのこともあり、人気者であったハリーだからこそ落胆は大きかったらしい。グリフィンドールの練習はこぞってハリーを無視するようになったしい、レイブンクローやハッフルパフでさえハリーを詰った。


スリザリンはおおっぴらに悪口を言った。ハリーが通るたびに拍手をし、口笛を吹き、はやし立てる。


「まったく。わが寮までなんて幼稚な!」


このことに憤慨していたのはアリィだ。サラはそんなアリィを呆れた目で見ているが、口をはさむことはなかった。口をはさんだりしたら、アリィの膨大な知識量をもってして論破してくるからだ。


「まあまあ。それだけハリーが期待されてたってことだろ?」

「だからって、寮杯に関しては自分たちで取りに行くべきでしょう!それをっ、グリフィンドールが無理になったからって!」

「ほら、ここで憤っていても仕方ないんだから、落ち着いて」

「貴方はこの事態にどうとも思わないんですか!」

「そういうわけじゃないけどさ、今回に関しては、ノーバートをなんとかできただけで及第点。ハリーたちはよくやったよ。ただ、気を抜いたのは減点ってところかな」

「教師の様な口を利くな」

「しょうがないだろう?それに、何事も成功と挫折があってこそだと思ってるしね。ハリーにはロンも俺もいるから大丈夫」

「貴方って、たまに驚くほど冷たい人間になりますよね」


フンと鼻を鳴らしそっぽを向いてしまったアリィに苦笑いを浮かべる。


確かに友人ならば今の事態を何とかした方がいいのかもしれないが、それ以上に自業自得感が否めない。透明マントをかぶっていれば問題なかったはずだし、ネビルに関しては良心故の行動だったのだ。


まあ、後先考えて行動することの重要さが身に染みてわかっただろう。


それに、これに懲りてハリーは少し自重してくれるかもしれない。彼は好奇心と正義感に突き動かされすぎるきらいがある。


いつか、それが身を滅ぼしそうで彼を見ているとたまに怖くなる。


「まあ、俺から見てもポッターの行動力には感服するな」

「だよなー。もう首は突っ込まないってこの前こぼしていたのに、ちょーっとクィレルの声が聞こえてきただけでこれだぜ?」


肩をすくめる。


昨日、ハリーがクィレルが誰かに脅されていたのを聞いたそうだ。しかし、証拠はないためダンブルドアには進言できない。三頭犬のフラッフィーもいるが、あんなの闇の魔法使いならどうとでもできるんだろうなとか思ったり。


「クィレルか…。本当にスネイプ教授だと思うか?」

「スネイプ先生は、確かに根暗で陰湿で依怙贔屓をする先生ですが、魔法薬学に関しては素晴らしい教授だと言えますよ」

「おい、わが寮の先生を悪く言うな」

「あの性格で褒められるところなんてそうそうありませんわ」

「スネイプ先生は確かに好い先生だよ。しっかり聞けばなんだかんだしっかり教えているし、グリフィンドールには冷たいからって提出物に対しては確かな点もつけてるしね。ただ、ことあるごとにねちねちと点を減らしてくるのはいただけないけど」


本当に、どうしてああも、減点対象になるものをことごとく見つけてくるのだろうか。まさに重箱の隅をつつくように。


あれさえなければ、いい先生だといえるのだけどなあと思いながら紅茶を口に運ぶ。ふわりと紅茶の匂いが口の中に広がった。


「ま、スネイプが犯人だろうが、クィレルがどうなろうが俺たちには関係ない、か」

「そこにハリーが関わってきたらどうするのです?彼は賢者の石を守ろうとしているのでしょう。また何かの機会に犯人が動き出したと知ったら、彼は迷わずあの扉を開けますよ」

「手助けするつもりか?」

「さすがに命の危機になったらどうにかしたいとは思うけど…。でも、どうだろうなあ」

「何がだ?」

「ちょっと迷ってる」

「ほう、貴様ならポッターたちの命には代えられないとか言って一緒に行動するかと思っていたぞ」

「それも考えたけど、ダンブルドアの意向もよくわからないからね」

「ダンブルドア?」

「ハリーとヴォルデモートは切っても切れない縁があるようだ。それはたぶんあの額の呪いも関係していると思う。ダンブルドアがそれに気づいていないはずがない。また、ハリーの性格も見てきていないはずがない。俺がダンブルドアという人を買い被っていなければね」

「お前の人を見る目は確かだ。それで?」


静かに肯定してくれたサラに笑みをこぼす。


「つまり、わざとハリーを泳がせている、というより賢者の石に差し向けているとしたら?ハリーが危険にさらされようとしているのに、彼はなんの措置も取らない。ホグワーツが安全だから?違うな。自分の力を過信しているから?違うだろう。それとも、実は何も知らないのか?」

「ダンブルドアが、ってことか?ポッターたちがしていることを?」

「ダンブルドア校長はとてもお忙しい方。それも可能性はあるわ」


苦い顔をするアリィの言葉に体から力を抜き背もたれに寄り掛かる。ぎしっと少し軋んだ木の椅子だが、その安定感は確かだ。


天井を見上げながらああでもない、こうでもないと頭の中で考えをめぐらせていくが、やはりまだダンブルドアという人物をよく知らないこともあり、彼の考えなど読めるはずもなかった。


「二人は傍観だな?」

「ああ」

「ええ。ヴォルデモートが復活するような事態にならなければ、ですがね」

「オーケー。俺も今回は傍観ってことでいこう。ダンブルドアを信じてみる。この学校で何十年も校長をやってるお方だ」


そうと決まれば、あとはしばらくハリーたちとは距離を置こうかな。俺は俺で調べてみたいこともあるし。


「そういえば、もうすぐテストだけど、君たちは…心配はいらないか」


見回した二つの顔が得意げに口角を上げたのを見て、余計なお世話だったなと肩をすくめた。


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