一週間で三倍にまで成長したドラゴンを見て、サラは常に上機嫌だった。それは、気持ち悪いほどに。
たまたま見かけたらしいアリィが何事かと俺を問いただしてくるほどだ。さすがに、ハグリットも関わってくるためごまかしたけれど、そろそろどうにかしなければならない、とハリーたちとは話し合っている。
だって、この調子で成長を続ければ、あのドラゴンはすぐにハグリッドの小屋を突き破るほど大きくなってしまうだろう。森番の仕事も放置状態であるため、そこらへんもちゃんとさせなければいけない。
ということで、ハリーの提案のもと、ロンのお兄さんであるドラゴンの研究をしているというチャーリーに頼むことになった。
「…そうか」
チャーリーの返事は是。しかし、法律違反のドラゴンを運ぶのはそう簡単なことではないため、こちらもいくつかの校則を破ることになりそうだ。
それを伝えたときのサラは目に見えて落ち込んだ。
「…わかってはいたが、もうノーバートとお別れなのか」
「……いや、うん。まあ、そうだな。うん」
「研究所で変な実験に使われないだろうか。他のドラゴンにいじめられないだろうか?…もしも群れになじめなかったらどうする!」
「……大丈夫だって。お前がノーバートを育てたんだ。あの子はちゃんと立派なドラゴンになるよ。自分が育てた子を信じろよ」
神妙な顔をしてサラの肩を慰めるように叩いてやる。
内心は、あの、餌をむさぼるだけのドラゴンにそんな殊勝な心があるとは思えないというものだった。というか、あれはこいつらを親ともなんとも思っていないだろう。きっと、餌を運んでくれる邸のいい下僕の様な感じだ。
でも、こうでも言わないと子離れしてくれないだろう。こいつは絶対に親ばかになるな、っていつかも思ったことを思いだした。
実際に、子供ができたときのこいつは相当親ばかだった。
そして土曜日。
ロンはノーバートに手を噛まれ、二倍くらいに膨れ上がらせてしまったため、マダム・ポンフリーのところへ行くことになった。
透明マントで運ぶ計画は、チャーリーから返事があった時点で決まっていたためサラには事前にお別れを済ませるように言っておいた。さすがにスリザリンの彼と一緒にノーバートを送りに行くわけにはいかない。
ついでに、俺も一緒に行くことはやめておいた。
理由の一つに、俺だけ最後の別れができることにサラがすねて面倒になりそうだったからというのがある。
他には、いくら小柄とはいえ、3人で透明マントに入り運ぶのはいささかきつかった。
でも、行けばよかったと思ったのは翌日だった。起きるとハリーが死にそうな顔で俺の枕元になっていた。むしろ、もう死んでいるのかとおもったぐらいだ。
ハリーは、やはり死にそうな声でどうしよう、僕…とつぶやいては顔を青くしていた。
宥めて理由を聞くと、昨夜、ノーバートは無事に引き渡せたらしいが、なんでも帰り道に透明マントを忘れて閉まった挙句、フィルチに見つかりマクゴナガルに一人50点も引かれてしまったらしい。
思わず頭を抱えてしまった。
やっぱり俺も行けばよかったか。
いや、でもそんなことをしたらサラがうるさくてかなわない。
「ん?でも一人50点ならなんで150点引かれたんだ?」
「ネビルだよ…」
すっかり沈んだ声でハリーが教えてくれた。
聞いてしまえば、なんて間抜けな話だとしか思えないのだが、彼はハリーたちに忠告しようとしてのことだ。彼に責任があるとはいえない。
まだ眠っているネビルのベッドをみやる。
こんもり膨れ上がった布団の中できっとネビルは責任を感じて泣いていたことだろう。
「ハリー。とりあえず、そんなに落ち込むな。頑張って取り返す方法を考えよう」
「でも…」
「それより、朝食の時間だ。ほら、とりあえずその情けない顔を洗って来い」
食べ物なんて喉を通らないというハリーの背中を無理やり押して準備を澄まさせる。一応ネビルにも声をかけたが、彼はうなるだけで布団から出てこようとはしなかった。
なんだって、ハリーの周りにはこうもトラブルが舞い込んでくるのだろう。