一時間後ハグリッドの部屋を訪ねると、驚いたことにカーテンが全部閉まっていた。
今日は久しぶりに晴天で気温だって高いのに、暖炉にはゴウゴウと炎をあがらせていて、窒息しそうなほど暑かった。実際、ハグリッドも汗がだらだら垂れている。
俺たちを招き入れたハグリッドはきっちり扉を閉めて、空気はさらにむっとした。
「それで、おまえさん、何か聞きたいんだったな?」
「うん。フラッフィー意外に『賢者の石』を守っているのは何か、ハグリッドに教えてもらえたらなと思って」
ハグリッドはしかめっ面をした。そして、答えはノーだった。まあ、当たり前だよな。
しかし、ハーマイオニーのおだてで、いともたやすく口をひらく。いくら森番とはいえ、あまりにこいつらを信用しすぎじゃないか?俺は聞きながら苦笑を禁じ得なかった。
「スネイプだって?」
「ああ、そうだ。まだあのことにこだわっておるのか?スネイプは石を守る方の手助けをしたんだ。盗もうとするはずがない」
なるほど、各先生方が魔法の罠をかけたのか。じゃあ、三頭犬から賢者の石にたどり着くにはそうとう手ごわいだろうな。
「ハグリッド、窓を開けてもいい?ゆだっちゃうよ」
ロンが汗をぬぐいながら聞いた。しかし、ハグリッドはそれを断った。
「ハグリッド、あれは何?」
ハリーが暖炉を指さした。その炎の真ん中、やかんの下に大きな黒い卵があるが、俺はそれを極力見ないように気を付けていた。
しかし、とうとう、その話題になってしまった。これは、しばらくサラを避ける必要があるかもしれない。あいつに知られたら、絶対に連れて行けとうるさい。
「ハグリッド、どこで手に入れたの?すごく高かったろう」
ロンはそういいながら、火のそばに屈みこんで卵をよく見ようとした。
「賭けに買ったんだ。昨日の晩、村まで言って、ちょっと酒を飲んで、知らないやつとトランプをしてな。はっきりいえば、そいつは厄介払いして喜んでおったな」
「だけど、もし卵が孵ったらどうするつもりなの?」
「それで、ちいと読んどるんだがな」
ハグリッドは枕の下から大きな本を取り出した。
『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』だった。
「俺のはノルウェー・リッジバックという種類らしい。こいつが珍しいやつでな」
ハグリッドは大満足そうだった。
その姿がサラザールとかぶって俺は頭が痛くなった。