人生幸福論 | ナノ


18:趣味と実益  




本当にスネイプが賢者の石を狙っているかどうかは別にして、クィレルの「怪しげなまやかし」か…。


三頭犬だけが守りではないことはわかっていたが、ふむ、どういうものだろうか。


たとえば、俺たちの時代なら賢者の石をどうやって守っただろうか。


ハリーたちは、四階の廊下を通るたび、扉にぴったり耳をつけて、フラッフィーのうなり声が聞こえるかどうかを確かめているし、クィレルと出会うたびに、励ますような笑顔を向けていて、見ていて気持ち悪かった。


そして、ハーマイオニーはというと、感心なことに、もう試験の対策をしはじめていた。


まだ2ヶ月以上先である。


そして、先生たちもハーマイオニーと同意見のようで、山の様な宿題が出て、イースター休暇は宿題を片づけることに精を出さなければいけなかった。


ロウェナことアリィからはあれから何の音沙汰もない。たまに図書館でみかけるが、友達と一緒のようで挨拶だけにとどめていた。


サラはスリザリンなため、ハリーたちといるときはまったく近づけそうになかった。


俺は、試験のための勉強を片づける傍ら、図書館に来ることも多くなっていたためいろいろな文献を読み漁っていた。


マニアックものまで数多くそろえられているここは、昔に比べればずっと本の数も図書館の規模も多くなっている。


あのころの図書館の分権のほとんどはロウェナの私物だった。彼女は出会った当初から本が大好きで、しかも記憶力もよかったために、本で探すよりも彼女に聞いた方が適切な本と、書かれているページ、そして内容まで話してくれた。


俺は、狼男と夜のランデブーというよくわからないタイトルの本を引き抜き、席へ戻る途中、珍しい人をみつけた。


巨体な体であるにもかかわらず、一目をさけようとしているのかその背は曲がり、どこか落ち着きがなさそうに周りを見回している。


ハグリッドだ。


彼は、周りを見回して人がいないことを確認すると本を数冊抜き取ってそれを背に回した。


俺は背後にいるため、その本のタイトルがよく見えるようになる。


『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』


ハグリッドは俺に気づかず、ロンたちがいる机の方へ行ってしまった。


「ドラゴン?」


あまりいい思い出がないその生き物に思わず眉をしかめる。


一応その棚に近づいてみると、ドラゴンの生体から飼い方、捉え方に至るまでドラゴン関係の本が置かれていた。


それを数冊抜き取り、ぱらぱらとめくりながらハリーたちのもとへ戻る。


「ハグリッドったら、背中に何を隠してたのかしら?」

「もしかしたら、石と関係があると思わない?」

「いや、関係なさそうだぜ?」

「祐希?」

「これ見ろよ。ハグリッドが借りて行った書棚のものだ」


今抜き取ってきたものを置いてみせる。


「ドラゴン!?」


ロンが目を丸くする中、ハリーがそういえば、と口を開く。


「初めてハグリッドに合った時、ズーッと前からドラゴンを飼いたいと思ってたって、そういってたよ」

「でも、僕たちの世界じゃ法律違反だよ」


そして、ロンがドラゴン飼育に関して説明して見せる中、俺は昔、サラザールが嬉々として見せてきた一つの卵を思い出していた。


サラザールは、ああ見えて大の動物好きだ。動物、というより魔法生物といった方が正しいのかもしれない。


別に、サラが何を好きだろうと俺はいいんだ。そう、別にいい。


ただ、問題だったのは、出張で遠方に行くことがあると必ず何かしら魔法生物を拾ってくるのだ。それは、捨てられたネコといったかわいらしいものの時もあれば、路頭に迷っていた屋敷僕妖精のときもあった。


そして、俺たちにとって一番記憶に残っているのは、どこからか拾ってきたドラゴンの卵だ。育てるといって聞かないサラザールを俺たち3人がかりで説得したのは今でもはっきり覚えている。


生徒もいるホグワーツでドラゴンを育てるなんて冗談じゃない。無理だ。


孵ってしまえば愛着がわくこともわかっていたため、俺たちは強行突破でサラザールを縛り付け、卵をドラゴン研究所へ持って行ったのだ。


あの時はそれはもう、サラザールが怒り狂って宥めるのが大変だった。そして怒りが収まったかと思えば、今度はまだ生まれてすらいないドラゴンの心配をし出すのだ。


きっといろいろな実験をされて可哀そうな目にあっているとか、まわりにじめられているのではないかとか、見張っていなければすぐにでも飛んでいきそうな勢いだった。


「祐希、大丈夫?顔色が悪いわよ?」

「あ、ああ、大丈夫だ。ちょっと昔を思い出しただけだ」

「昔って、俺たちまだ11だぜ?」


怪訝な顔をするロンに苦笑だけを返しておいた。


嫌な予感がするのはなぜだろう。


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