『ニコラス・フラメル
我々の知る限り、賢者の石の創造に成功した唯一の者』
「なるほどな、賢者の石か」
「これはまた、厄介なものを隠していますね。ダンブルドア校長先生も」
サラはいつも通り腕を組んでしらっとした顔をしているが、対照的にアリィは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「ダンブルドアとフラメル氏は確か錬金術の共同研究とかしてるし、友人同士なんだろう。っていうか、フラメル氏って今何歳なんだ?」
もしかして、俺たちが生きてたときとかぶってる?と疑問に思うと、アリィが否定してくれた。
「彼は今、670歳前後だったはずです。とりあえず、私たちとはかぶっていないことは確かですね」
「そんなに長生きしてどうすんだか」
「最愛の夫人もいらっしゃるようですし、仲睦まじくやっているのではありませんか?」
「んな長くつれそったら、嫌になりそうなもんだよな」
「今の問題はそこではないだろう」
サラに話を戻された。
「狙ってるのは誰だと思う?」
俺の問いかけにサラが青い瞳を閃かせる。
「十中八九ヴォルデモートだろうな」
「サラ、本気でお前、止めて来いよ。子孫だろ」
「今は何のかかわりもない血族だ」
それはわかってるけどさ。
一回敗れたんだったら、そのまま引っ込んでろよめんどくさい。
「ですが、このホグワーツにはちゃんと守りが働いています。そう簡単に闇の帝王だろうとなんだろうと入ってこれるとは思えませんよ」
「だが、内通者がいる」
「クィレルかスネイプだろ?」
「スネイプ教授は違う」
「スリザリンの寮監だから?」
「それだけではない」
「まあいい。じゃあ、クィレルがヴォルデモートの手下だとして、賢者の石を狙って侵入してきたとして、そう簡単に手に入れられるとは思えない」
「そうですね。相手はダンブルドア校長先生です。彼がそうやすやすと渡すような仕掛けを施すとは思えません」
「ならば、この件に関してはほおっておけばいいのではないか?何か問題があれば、今の校長であるダンブルドアがなんとかするだろう。我々が手を出す必要もない」
「ま、そうだな」
「賢者の石に関してはそうですけど、話を聞いている限り、ポッター君たちは気を付けておいた方がいいように思いますよ」
「え?ハリー?」
「ああ、だろうな」
「え?なんで?」
ロウェナの言葉にサラも深く頷く。それに首を傾げれば、彼女は苦笑しながら教えてくれた。
「彼ら、随分好奇心旺盛で、正義感にあふれているようですから」
「典型的なグリフィンドール気質だな」
「うっわ、その言い方すげえ腹立つ」
「賢者の石のことで、首を突っ込んで藪蛇にならなければいいんですけど」
ああ、確かに。哀しいかな、否定できない。
「さすがに、生徒の危機となれば、私たちも見過ごせませんしね」
「面倒だな。いっそ、行動すべてを妨害しておけ」
「無茶いうなって」
あれ、さっきと立場、逆転してないか?
「まあ、一応様子は見ておくよ…」
ああ、でも、彼らは頭の回転が速いうえに、多少の偏見によって考え方に偏りがあるものの推理力もある。きっと、賢者の石についてもすぐに検討がつくだろう。
もし、クィレルが行動に移したことにハリーたちが気づいたときは迷わず守りに行きそうだ。その前にダンブルドアにちゃんと相談してくれればいいのだけど。
トロールの時同様、助けを求めるってことを先に思いつかないような奴らだからな…。
「うん、気を付けておくよ」
苦いものを飲み下すように、紅茶を一気に煽った。