理事長主催のクリスマスパーティーだなんて、この学校は変わってるね。そんな事を友達と話した1年目は、先輩もわんさかいる会場でどう振る舞えばいいのかわからずうろたえていたような気がする。
あれから2年、高校で最後のクリスマスパーティーに私は参加している。若いうちだと自分に言い聞かせて、ピンク色の丈の短いワンピースタイプのドレスを着て来た。大胆すぎる気もしたけど、年に1度、それに最後だし思い切った。下手をすればドン引きされるかもとも思ったが案外みんなの反応はよく、内心ほっとしている。

「みょうじさん」
「あっ、平くん!久しぶり!」

声を掛けられて振り返ると、去年同じクラスだった平くんが料理を盛ったお皿を片手に笑顔を向けてくれていた。黒のブラウスに紺のジャケット、ワインレッドのネクタイをきっちり締めていて、その姿はまるでなんだか…

「…マフィアっぽい」
「はは、やっぱり?今日何度言われたかわかんないよ…そんなつもりはないんだけどなぁ」
「けど平くんは前線のイメージないなぁ…。あ、スパイ!」
「スパイ?」
「うん、平くん派手な方ではないからさ、こう…無個性を生かして…スパイ、みたいな?」
「無個性って酷いなぁ」
「あはは!」

ドキドキと胸が跳ねる。うまく話せてるかな、わかんない。自分が何を話しているのかすらよくわかっていないぐらいには緊張している。まさか向こうから話し掛けてくれるとは思ってなくて、驚いてもいる。素直に嬉しいと思った。

しばらく話していると、私たちのもとにプレゼントを抱えたサンタがやってきた。ほほほ、と笑うサンタがまず先に私にプレゼントを渡してくれた。

「わーい!今年は何が当たるかなー!」
「う〜…今年はまともなのがあたるといいな…」
「ぷっ、去年と一昨年はなに渡されたの?」
「どっちも女の子用の可愛いアクセサリーだったんだ…」


しょんぼりした様子の平くんが可愛くて思わずきゅんとする。サンタは心なしか笑いをこらえているような気がした。そんなやり取りがあったからか、サンタは濃紺の袋を彼に手渡した。

(あ、それは…)
「今年は男物っぽい…?ありがとう、サンタさん!」

サンタは目を三日月にして微笑み、違う人にプレゼントを配りに行った。私はリボンを解き、そっと中身を取り出す平くんから目が離せなかった。

「わぁ…マフラーだ!」
「よ、良かったじゃん」
「うん!」

動揺を隠して、無難なコメントをする。だって、そのマフラーを買ったのは他の誰でもない私だからだ。

「青のストライプか…どう、似合う?」

平くんはよっぽど嬉しかったのか早速首に巻いて私に見せた。実はこのマフラー、平くんの事を考えて買ったものだったりする。その甲斐あってか、それは彼によく似合っていた。

「似合うんじゃない?」
「へへ、ありがとう!それに、すごく温かい。今年はいいものもらったな〜」

彼の喜ぶ顔が、私の胸を満たしていく。まさか本当に本人に渡るとは思わなかったし、こうして目の前で巻いてくれるとも思ってなかった。

「…喜んでもらえて、よかった。」
「え?…もしかして、これ、君の…?」
「ばっ、そんなわけないでしょ!」
「えっ、え〜…?」

言ってからはっとする。今更訂正もできないし、私は羞恥でいたたまれなくなる。

「わっ、私、友達の所行くから!」
「うん、わかった。メリークリスマス、みょうじさん。」
「…メリー、クリスマス。」



(これは君からだったんだね。ありがとう、みょうじさん。)


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