メリークリスマス!と紙のコップで乾杯を交わし、オレンジジュースを喉に流し込んだ。24日はこのサッカー部部室を使って部員全員でパーティーをした。お菓子とケーキを山ほど買ってみんなで食べて、優勝した時の試合のビデオを見たり、笑って泣いて、いい思い出ができた。
そして今日、25日は1年生だけでプレゼント交換のあるパーティーを計画、実行している。壁山くん、栗松くん、宍戸くん、少林寺くん、春奈ちゃん、そして私。昨日の3分の1の人数で少し寂しい気もするけど、やはり先輩がいるのといないのとでは心持ちが違う。怖いとか嫌いとかはないけど、やっぱり1年生で集まるとほっとする。普段廊下でよく顔を見るからだろうか。

「昨日あれだけお菓子食べたし今日はちょっと抑えるよー…ね、春奈ちゃん」
「そうよねー、冬って太りやすいし…ましてやこんなにカロリーの高いお菓子…昨日だけでお腹いっぱいよ…」
「女子は大変ッスねえ」
「2人とももう手遅れなんだから気にせずに食べるでヤンス」
「おい、バカ…」

私と春奈ちゃんの正義の鉄拳が栗松くんにヒットした。

「2人とも細いしよく動いてるから、昨日と今日ぐらい食べちゃっても平気だよー」
「はー、優しい。優しいなあ少林寺くんは!誰かさんと違って!!」
「本当本当。誰かさんと違って!」
「だいたい女子は体型を気にしすぎでヤンスよ!気にせず食べればいいでヤンス!」
「よーしわかった、今度から栗松くんのドリンクは原液で出す事にしよう」
「ごめんでヤンス」

あはは、と笑い声が部室に響く。やっぱりこのメンバーは安心する。軽いやり取りをしながらお菓子を食べ、みんなで入学してからの思い出話に花を咲かせた。染岡先輩が最初すごく怖くて話し掛けられなかった話や、キャプテンを先頭に夕日向かって走った話、影野先輩に気付けなかった話、半田先輩と松野先輩と賭け事をして負け、1週間パシられた話…長く苦しかった試合の話。思い出せばどんどん溢れてくる8ヵ月の濃い思い出たち。この学校に来て、このひとたちに出会えて本当に良かったと思えている事が、どれだけ幸せな事なのだろうか。

「それじゃ、そろそろプレゼント交換でもしますか!」
「1500円以内、みんな用意してるよね?」

はあい、という疎らな返事と共に各々プレゼントを出した。様々な形、大きさ、ラッピング。どれもこれも中身が見当つかなくてわくわくする。
みんなで輪になり、携帯でジングルベルを流してプレゼントをぐるぐる回した。音楽が鳴り終わったところで回すのをやめ、お互いの顔を見合わせた。

「開けていいでヤンスか?」
「…うん、開けよっか!」

綺麗に包まれたラッピングを丁寧に剥がすと、中身はカピバラのぬいぐるみだった。すごくふわふわで、思わず見た瞬間抱き締めて頬擦りをした。

「〜〜〜っ!可愛いー!これ春奈ちゃんのやつ?」
「え、違うよ?」
「えっうそ、じゃあこれ、誰の…」
「そんな事言われたら言い出しにくいじゃん…俺だよー…」
「宍戸くん?!」

ぬいぐるみに負けないぐらいふわふわの髪を揺らして宍戸くんは笑った。まさか男の子がこんなに可愛い物を選ぶなんて思っていなかったので思わず驚いてしまった。

隣にいた春奈ちゃんは、少林寺くんの青と黄色のボーダーのマフラー、栗松くんは私のサッカーボール型のマグカップ、壁山くんは春奈ちゃんのトイカメラ、宍戸くんは栗松くんのうまい棒100本詰め(!)、少林寺くんは壁山くんの黒のニット帽をそれぞれ貰い、みんなでプレゼントを買いに行った時のエピソードを話したりした。

太陽が沈みそうになる空、気付いたらもう結構な時間になっていた。冬は日が長いのでつい遅くまで遊んでしまう。そろそろ帰ろうと誰かが言い出したのを皮切りに、広げたお菓子などを黙々と片付けた。
綺麗になった部室を出て、ガチャリと鍵をかけた。

「私鍵返してくるね」
「ありがとうでヤンス」
「あ、俺も行くよ」
「いいよいいよ」

宍戸くんの優しさをやんわりと断って部室に背を向け、職員室を目指した。吐いた息が白く濁り、今の寒さを知らされたような気分になる。しばらく歩くと後ろから軽やかで間隔の短い足音が聞こえてきた。振り返ると、宍戸くんが走って私のもとに向かっているところだった。

「宍戸くん!」
「みんなに行けって言われた。暗い校舎にみょうじさんだけ行かせるのかって音無さんに怒られたよ」
「もー、大丈夫なのに…ごめんね?」
「全然いいよ、俺はついてくつもりだったし」

ぽつぽつと話しながらさらに校舎を目指した。正面玄関をくぐると、薄暗い廊下が伸びていた。確かに一人じゃ少し怖かったかもしれない。ノックをして職員室に入り、鍵を元の場所に戻して2人で校舎を出た。
砂を蹴る音を響かせながらみんなが待っているであろう部室前に戻ろうとそちらを見やると、影がない。宍戸くんと顔を見合わせて首を傾げると、携帯にメールが届いた。春奈ちゃんからだ。

「音無さん、なんて?」
「…みんなで先に帰ったんだって。2人で、ゆっくり帰って…?もー、なんでよ春奈ちゃん…」

ね、と宍戸くんを見上げると困ったように笑っていた。そして何故か宍戸くんがごめんと言う。宍戸くんのせいじゃないのにどうしたんだろうか。私は首を振った。
みんなが帰ってしまったのでそのまま2人で校門を出て帰路を行く。話題は今日の話。

「ぬいぐるみ、すごく可愛いね。宍戸くんが買いに行ったの?」
「うん、俺姉ちゃんがいるから付いて来て貰ってさ」
「そっかー。もし男の子にあたったらどうしてたの?」
「え?あ、そっか。俺…みょうじさんの事しか考えてなかった」
「へ?」
「みょうじさんの喜びそーなもの買ったんだ。喜んで貰えてよかった」

宍戸くんはにっと笑って頬をかいた。私はその言葉の真意が見えなくて、キョトンとしてしまう。

「…みょうじさん、その」
「うん?」
「俺さ、あの、」
「うん」
「………来年は同じクラスになれたらいいな」
「そうだね!宍戸くんも、春奈ちゃんも壁山くんも栗松くんも少林寺くんもみんな同じクラスになれたらいいね!」
「はは、だな。みんな一緒ならいいなー」
「うん!」

そんな話をしていたら、あっという間に別れ道。またね、と手を振ると宍戸くんもバイバイ、と返してくれた。


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