もう1人のマネージャーがケーキを焼いてきたとかで、部室には甘い匂いが立ち込めていた。何だかんだとても賑わって、美味しいもの食べて、ちょっとしたパーティー気分を味わえたみたいでとても楽しかった。
もうすぐ1年が終わり、新しい年が始まって1つ学年が上がる。そう考えたら、わくわくして仕方無かった。けど、クラス替えだけは私にとって憂鬱だ。折角鬼道くんと一緒のクラスになれたのに、また離れちゃうかもしれないなんて。

(やだなぁ)

新しい友達が出来る喜びと鬼道くんと離れてしまう悲しみ。次も同じクラスになりたいけど、世の中そんなにうまく出来てないよね…。
部室の片付けが少し残っていたので、みんなが居なくなった部室で1人溜め息をつく。冬休みもほとんど部活だから、ほぼ毎日顔を合わせられるだけでいいかなぁなんて前向きに考えてみる。ぼんやりと物思いに耽っていると、扉が開かれた。

「みょうじ」
「あ、佐久間くん。どうしたの?」
「忘れ物」

そう言って彼はロッカーを開き、今日練習で着ていたシャツを手に持った。

「今から鬼道さんと源田と一緒に帰るけどお前も帰るか?」
「うん、帰る帰る」
「2人は門で待ってる。急ごう」
「うん」

丁度用事も終わったし、私は3人で帰ることにした。

「待たせて悪いな」
「みょうじも一緒か」
「うん、部室で会って誘われて」
「2人きりで何してたんだか…」
「げ、源田くん!何にもしてないよ…」
「冗談だよ、冗談」

へらへらと笑った源田くんは私たちをからかった。鬼道くんの前だったしやめてほしい。勘違いされたら嫌だ。

「それにしてもケーキうまかったな」
「あぁ、アイツにあんな才能があったなんてな」
「中途半端に食ったから余計腹減った」
「なんか食べに行く?マックとか」
「あー、だったらモスのが」
「ならロッテリアにでも」
「いっそケンタッキー行くか」
「俺は帰る。今日はどこぞのクリスマス会に参加しなきゃならなくてな」
「あっ、じゃあ私も帰る」
「…仕方ない、2人で行くか」
「そうだな。じゃ、また明日」
「お疲れ様ー」

だらだらと話しながら流れで二手に別れた。さっきまで源田くんと佐久間くんがよく話していたので急に静かになる。鬼道くんと2人きり、少し緊張する。

「みょうじ」
「ん?」
「明日は朝8時集合で合ってるか?」
「ちょっと待って」

鞄から手帳を出して時間を確認する。

「うん、合ってるよ」
「それ、いいな」
「え?」
「手帳」
「鬼道くんは持ってないの?」
「あぁ。メモ帳に適当に書き込んでるだけで、手帳の類は持っていない」
「鬼道くん忙しいし、無かったら不便じゃない?」
「忙しい訳ではないが、不便…そうだな…確かに不便だ。」

そんな話をしている内に、あっと言う間に別れ道に辿り着いてしまった。帰り道はここから違う。

「じゃあまた明日」
「また明日!」

鬼道くんと別れてから少し考えた。クリスマスプレゼント、本当は何かあげたかったけど鬼道くんは欲しい物何でも持ってそうで結局思いつかなかったから。
帰り道から少しそれて、繁華街へ足を向ける。明日鬼道くんに1日遅れのクリスマスプレゼントを贈るために手帳を買いに行こうと決めた。渡したら彼は喜んで受け取ってくれるだろうか。私は鬼道くんの好きそうな物を頭に浮かべて、プレゼント選びに没頭したのだった。


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