何回も何回も失敗を繰り返してやっと人に食べてもらえるものができた。
帝国学園サッカー部にクリスマスなんてものはなく、いつもと変わらず練習があった。そんなみんなに少しでもクリスマス気分を味わってもらおうとマネージャーの私はケーキを焼いた。悪戦苦闘の末にやっと出来たケーキ。みんな喜んでくれるだろうか。

「みんなお疲れ様ー」
「おお、マネージャーもお疲れ」
「今日はみんなのためにケーキ焼いてきたんだー」

ぱこっと蓋を外してケーキを見せるとみんなすごく喜んでくれて、苦労して作ってくれた甲斐があったなあと思わせてくれた。

「見た目も味イケるな」
「へぇ、マネージャーこんな事出来たんだ」
「甘いもの食べたら疲れ飛ぶなぁ」
「お前は女子か」

わいわい賑やかに過ごす時のみんなの顔は、普段あんなに厳しい練習を耐え、試合で凛々しい表情を見せる彼らとは全くの別人で、どちらも近くで見守れるのはマネージャーの特権だと少し自慢したくなる。
みんながケーキに手を出す賑やかな部室。その中で唯一ケーキを食べない人が、1人。

「五条、お前食べないのか?」
「え?あぁ、私は「五条くん甘いの苦手なんだよね?」
「「え」」
「そう言う事です」

五条くんはこちらを見て眼鏡を持ち上げた。みんなが少し唖然としているのを感じたけど理由がわからず私は疑問符を浮かべていた。

「だから五条くんには特別に甘さ控えめのチーズケーキ焼いてきたんだ」
「「「「えっ」」」」
「本当ですか、ありがとうございます」
「だって五条くんだけ何にもなしじゃ可哀想だし…だってクリスマスだよ?」

チーズケーキもすごく練習してようやく納得いくものが作れた。ケーキを頬張る五条くんはおいしいですと言ってくれる。

「あ、五条くんケーキついてるよ」
「え、どこですか?」
「ここ、」

そう言って頬のケーキを指ですくい取ってそのままぱくりと口に運べば、周りは妙にざわつき始める。

「?、みんなどうしたの?さっきから変だよ?」
「…そういうのは、よそでやってくれ」
「えっ?なにどういう事?」
「みょうじさんが私のために作ったこの美味しいチーズケーキ、みなさんにも分けてあげましょうか?」
「…なんかムカつく!」
「腹立つ!」
「調子乗るな!」
「けどくれださい!!」
「そのチーズケーキください!!」
「美味しそう!」
「背に腹は変えられない!」
「くそっ、なんだこの負け犬気分は!」
「ははは、みなさん素直ですねえ」


帝国学園サッカー部は、今日もとても賑やかです。


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