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会えないからこそ、会いたくて



ふわ、って何かが覆い被さった



「…ん…?」



その感覚で目が覚めた僕は、まだ重たい瞼を開ける



「普賢、」



懐かしいような、知らない香りがした
暖かいような、冷たい声がした



「…望ちゃん?」



真っ暗闇の部屋の中
声だけを頼りに名前を呼び、我に帰る
望ちゃんは、ジョカと戦った時一緒に消滅してしまった、はずだった
だから、自分の目の前に居るわけがない

まさか、今は教主の天才道士が、化けてるとか…?

寝惚けすぎてまともに働かない思考は徐々に現実を受け入れたくないと言うように、とんちんかんな方向へ



「楊ゼン、悪ふざけは―――」

「…楊ゼンだと思うか?」



ぎゅって回された腕に力がこもる
これは僕の知ってる強さだった



「うそ…」

「嘘じゃない」

「…夢?」

「夢じゃない」

「でも、君は」

「普賢」



会いたかった、と影は言った
照れからか、心底そう思ってたからか、あるいは両方のせいか、掠れた声で



「どうして生きてるの?」

「…分からぬ。恐らく妲己のせいであろうが…」

「…そう…分からないのなら、仕方ないね」

「どうしてもおぬしにだけは、わしの口から生きてると、伝えたかった」

「それでこんな真夜中に?」

「こんな時間でないと元始天尊様に見つかってしまうからのぅ」

「…なるほどね」



元始天尊様の千里眼はとても厄介だけど一つだけ弱点がある
本人の意識が無いとき…つまり、眠っているときは千里眼を使えないのだ
共に修行していた時からそれを知ってる為、僕は納得する



「何か飲む?」

「いや、暫くこのままで…」

「…やけに甘えるね」



クスクス笑った
その声を聞いて望ちゃんも安心したように息を吐く



「拒絶、されたらどうしようかと思った」

「そんなのしないよ、望ちゃんは望ちゃんだもの」

「今は伏羲だがのぅ?」

「…伏ちゃん?」

「…いや、望のままでよいよ」



暫く抱き合った後、望ちゃんは静かに腕の力を緩める



「そろそろ、帰ろうかのう」

「結構トンボ帰りだね」

「何も考えずに来たからのう…期待したか?」

「まさか」



なんの事なのかは追求せずに即答する
予想通りだったのかそれを見て望ちゃんは笑い、おでこにキスした後、窓に足をかけた



「すまなかったな、起こしてしまって」

「構わないよ。……、」



『次はいつ来るの?』

喉まで出かかった言葉を飲んだ
と、言うより、言えなかった
自分は意外と欲深い奴だな、なんて苦笑しながら俯く



「……。また、近いうちに」

「え?」



顔を上げた
もうそこには誰もいない



「…桃、蓄えて待ってるよ」



一人言のように呟いた
考えてた事はお互い一緒だったらしい



会えないからこそ、
会いたくて




【あとがき】

カッとなって書いた結果こうなりました
元始天尊様の千里眼については捏造ですので原作の設定とは異なっているかもしれません
元始天尊様には見つかりたくないけど普賢さんには会いたい
そんな伏羲を全力で応援したかったのです



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