#2 蹣跚


柔らかくて温かい唇が、顔の至る所に押し当てられる。
丁寧に、愛おしそうに一つ一つの箇所に触れるその唇は、とても優しく心地が良くて。その甘い感覚に思わず感じ入ってしまえば、心臓は徐々に大きな鼓動を打ち始める。

「名前、」

不意に呼ばれた自分の名前に、ゆっくりと瞼を開いて彼を見る。
すぐ目の前では、綺麗な色のオッドアイがこれでもかと言うほど私を真っ直ぐに見つめていて。その熱い眼差しが何だかとても擽ったいのに、どうにも視線が逸せない。

押し倒された布団からは、焦凍くんの匂いがする。
縫い付けられる様に握られた掌は、お互いに少しだけ汗ばんでいて。彼の熱い左手は、私の右手にゆっくりと熱を移していく。

今にも触れてしまいそうなぐらい近い鼻先に、次は唇にキスをするのだろうかと考える。
触れるだけのキスをして、それが深いキスへと変わっていけば、その後は…。

私だって、もう何も知らない子供ではない。これから何が起こるかなんて、大体予想はついている。
でも、いくら頭で理解していたとしても、実際にどうなるのかなんて全く想像できやしない。こうして誰かに触れられるのは、これが初めての経験で、どうするのが自然なのかも分からないし、どう触れれば良いのかも分からない。

緊張で無意識のうちに身体が強張ってしまう。
これから彼に触れられるのだと、そう考えただけで頭の中が真っ白になってしまう。

「…怖いか?」

不意に、そんな言葉が焦凍くんの口から溢れ出る。それにハッとなって彼の瞳を覗き見ると、そこには心配そうに私を気遣う視線があって。

本当は「怖くないよ」とすぐに言い返さなければならないのに。
少しだけ、ほんの少しだけ、怖いと思う気持ちもあって、何と言えば良いのか分からない。

でも、素直に怖いと伝えてしまって、「怖いなら、今日はやめておこう。」と断られるのが、今は1番怖いことで。

平気だから離れないでと意味を込め、焦凍くんの手をぎゅっと握る。
すると、何やらピクリと反応した彼の手は、そのまま私の手をぎゅと握り返してくれる。

「不安にさせちまって、悪りぃ…俺も初めてだから、すげぇ緊張してる。でも絶対ぇ無理はさせねぇし、優しくするって約束する。だから、」

俺に、名前の初めてをくれないか。

そう口にした焦凍くんは、どこまでも真剣な瞳で私を見つめていて。胸の奥底がじんわりと熱くなってくる。

きっと彼は、この世の誰よりも私のことを大切に触れてくれるのだろう。
そんな彼の為なら、私は自分が持っているもの全てをあげてしまいたいと、そう思ってしまう。

ごくりと息を飲み込みながら彼の瞳を見つめ返せば、緊張で言葉が喉につっかえる。
ダメだ、ちゃんと伝えなければいけないのに。私の気持ち全部を、彼に知って欲しいのに。

落ち着きのない心臓の音が、やけに騒がしく耳に響く。
そんな中、決死の覚悟を決めた私は小さく首を縦に振り、何とか言葉を紡ぎ出す。

「うん…私の全部、焦凍くんにあげる…だから私にも、焦凍くんの初めてを全部ちょうだい…?」

初めて肌に触れる相手も、初めて肌を許す相手も、焦凍くんが恋人にする初めては、全部全部私がいい。
私じゃないと、嫌なのだ。

そんな醜い独占欲を、彼に全て曝け出す。
その瞬間、顔中にぶわっと熱が帯びる感覚に襲われる。

心臓が痛いぐらいに激しく鼓動を打ちつける。
どう言うことか、突然何も話さなくなってしまった焦凍くんに不安を感じて、そっと彼の顔を盗み見る。

するとそこには、これでもかと言うほど目を見開き固まっている彼の綺麗な顔があって。
驚きのあまり、思わず声が出そうになる。

どうやら私は、おかしなことを言ってしまったみたいだ。
それに気付いてしまえば、堪らなくここから逃げ出したい気持ちに襲われる。

慌てて彼から視線を逸らし、弁明の言葉を探していれば、いつの間にか近づいてきた彼の額が私の額へと重ねられる。

「名前、好きだ…俺の全部、名前のものだ。ずっと、一生名前だけのものだから。」

そう言った焦凍くんは声色は、何だかいつもより少し余裕がなくて。
そんな彼の様子に、どこまでも深く私を愛してくれているのだと伝わってきて、胸がぎゅっと締め付けられる。

ああ、焦凍くんが好きだ。
焦凍くんの全部が欲しい。

徐々に近づいてくる唇が私のそれと重ねられれば、大きくて温かな掌がそっと私の肌に触れてくる。まるで壊れものに触れるような優しい手つきに、彼に大切にされているのが目一杯に伝わって来て、胸がどくんと跳ね上がる。
そうやって彼に触れられてしまえば、ほんの少し怖いと感じていた気持ちもいつの間にか消え失せていて。
私はその日、自分の全てを彼へと捧げた。



そんな何年も前の、幸せだった頃の夢を見た。









見慣れた事務所の扉を開き、松葉杖をつきながら最奥の席へと向かって行く。昼のパトロールが始まる30分前、オフィスにはタイトなジーンズで身を引き締めたサイドキック達が待機しており、突然現れた私の姿にぎょっと目を見張らせる。それもそうだ、私がこうして事務所に出勤して来たのは、実に半月振りになるのだから。
そんな戸惑う同僚達へと軽く笑みを返しながら、奥の席で待つジーニストさんの元へと足を進める。すると、私が来たことに気付いた彼はその場に立ち上がり、奥の会議室へと私を通してくれた。

足を負傷した私が座りやすいよう、椅子を大きく引いてくれるジーニストさん。当たり前のようにそれをやってのける彼は、根っからの紳士なのだと改めて感じる。
デスクを挟んでお互いに向かい合うような形で座れば、怪我の具合の確認や最近のオフィスの様子など、他愛のない世間話が始まる。
そんな何でもない会話がひと段落ついたところで、私は彼に辞表をそっと差し出した。

こんな身体になってしまった今、私がヒーローを続けることは絶望的で。私の治療費を負担していた事務所のボスである彼が、それを知らない訳がない。

病院のベッドの上で何度も何度も想像した情景が、今目の前に広がっていて。
差し出された辞表を手に取るジーニストさんは、想像通りの困った顔を浮かべていた。

「別にヒーローでなくても、うちにはオペレーターの仕事だってある。もし君が良ければ、このままうちに残って今後も我々をサポートしてくれると嬉しいのだが。」

そんな優しい言葉が、落ち着いた穏やかな声色で紡がれる。
例えヒーロー活動ができなくても、私の居場所はここにあるから出ていかなくても良いのだと、私が必要なのだと、そう言って貰っている様で。その甘い言葉につい縋りたくなってしまう。

でも、決してその好意に縋ることは許されない。私は知っているのだ、今この事務所には十分な数のオペレーターが既にいて、これ以上は求められていないことを。
人員が飽和しているというのに、私の様な目も足も十分に使えない人間を雇うメリットなんて、この事務所にはどこにもない。
5年間もお世話になった事務所の脛を齧るような、そんな恩知らずなことなど私には到底できる筈もなくて。

「ありがとうございます。そう言って頂けてとても嬉しいです…。でも、やっぱり私は、これを機会に新しいことに挑戦したいと思っています。ジーニストさんには私を立派なヒーローにして頂いたご恩があるのですが、それでも、その…」

予め準備してきた台詞を口にする。ただそれだけの事なのに、ズキズキと痛む胸が苦しくて、思う様に言葉が喉を通らない。
これまで本当に良くして下さった彼にだけは、こんな嘘など吐きたくなかった。でも、そうしなければ私は彼の荷物になり続けてしまう。そんな事など、絶対にあってはならなくて。

無意識のうちに視線が手元に落ちてしまう。
不甲斐ない部下で、最後まで酷い部下で、本当にごめんなさい。
そう何度も心の中で謝り続ける。

そんな私を、ジーニストさんが責めることはなくて。
俯く私をまるで優しく抱き締めるようなとびきり優しい声色で、彼は穏やかに言葉を紡ぐ。

「君が自ら成長するためだと言うのなら、無理に引き止めたりはしない。
でも、これだけは覚えていて欲しい、我々はいつでも君が戻って来てくれるのを心待ちにしているということを。」

そんな彼の言葉に、表現しきれないほどの沢山の気持ちが胸の中から溢れ出す。
この5年間、私は身に余るほど沢山のものをこの事務所から貰い続けてきた。それに対して私が返せたものなんて、本当にごく僅かでしかなくて。
その優しくて温かい言葉は、私には勿体無さすぎる。本当は私なんて、心待ちにして貰えるような人間ではないのだ。

いつも優しくタイトに私を指導してくれたジーニストさんや、私を妹のように気に掛けてくれたサイドキックの皆んな。
彼らと笑い合って過ごした5年間が、沢山脳裏に浮かんできて、目頭がぶわっと熱くなる。

「ありがとう、ございます…っ」

これが最後だと言うのに、そんな何でもない言葉しか私の口からは出てこなくて。ポロポロと涙を零す私に、ジーニストさんは優しく頭を撫でてくれた。









任務中に負傷を負ったヒーローには、事務所で加入している保険が随時適応される。私の場合は一時休業災害という名目で保険が適応されているのだが、それはヒーロー活動をして貰えるお金の半分にも満たない。
そしてその心許ない支援ですら、来月からは途絶えてしまう。早々に仕事を探さなければ、私は来月分の家賃すらも払えなくなってしまうのだ。

怪我の後遺症により、長時間の立ち仕事や激しく移動をする仕事は選べない。座ってできる事務仕事を探してみるが、どの仕事も給与は今の半分ぐらいしかなくて。ヒーローしか知らない自分はこんなにも浮世離れしていたのだと、今更になって痛感する。
ヒーロー以外の職に就くからには、収入は今より確実に落ちてしまう。しかし、今ですらギリギリの状態で生活している私には、そんな現実など受け入れられる筈もなくて。

昼と夜とで仕事を掛け持ちしなければ、到底借金は返せない。
しかし、夜に沢山稼げる仕事なんて、大体限られている。

求人サイトに表示される、割の良い給与の数字。激しく動き回ることもなく、沢山お金を貰えるなんて仕事は、ホステスぐらいしかないだろう。

人と話をするのがあまり得意ではない私は、きっとそういう仕事は向いていない。
しかし、だからと言って仕事を選んでいられる立場ではないのだ。

生活が苦しくて、お酒を飲んだ経験は殆どない。しかし、忍耐強さだけはジーニストさんのお墨付きだった私なら、きっと何とかやり過ごせる筈だ。
知らない人と話をするのだって、初対面のヒーロー達と何度もチームアップを成功させた私なら、きっと上手くやれるだろう。

今にも震え出しそうな両手を握り締めながら、そう何度も自分に言い聞かせる。
いくらできない理由を並べたところで、やらないという選択肢など私に残されていない。こうして無理やりにも大丈夫なのだと思わなければ、心を守ることなどできなくて。

胸の中に溜まっていく行き場のない不安を、そっと溜め息と一緒に吐き出した。




松葉杖を使わずに歩けるようになったのは、つい昨日のこと。あまり無茶はするなという医者の言伝を頭の片隅に置きながら、近所の繁華街を一人歩く。スマホを片手に目的の店までやって来れば、大きなアクセサリーを光らせた男が私を奥の部屋へと案内した。

ヒーロー時代、こういう店にガサ入れをした経験が何度かあった。その時は、まさか自分がここで働きたいと申し出る日が来るなんて、微塵も思うことはなかった。
こういう店のオーナーは、大体が背後に良からぬ組織を持つ厄介な人達だ。穏便に事を進めなければ面倒事になりかねないと、少し気を張り詰める。

そうして通された部屋には、オーナーと思われる男が1人、煙草を吹かせながら座っていて。全身を舐め回す様な不躾な視線に不快感を感じながらも、取り繕った笑顔で挨拶をして、店で働きたい意志を伝える。
そんな私に男は何とも言えない表情を浮かべ、顎に生えた髭を摩りながら言った。

「確かに君可愛いし、スタイルも良いけどねぇ…正直、この業界ではキツいと思うよ?」

そう言って男は手元に丸めた私の経歴書をペロリと開く。

「君、元ヒーローなんだって?この辺だと、そういうヒーローとか気にするお客さん結構いるんだよねぇ。しかもその目元の傷とか、正直ちょっと…。」

そう言って、男は私の右目の目元にある傷をチラリと見る。それは先日の戦闘で付いた傷で、もう綺麗に治ることはないと医者に言われたところだった。化粧で隠したつもりだったが、どうやら上手く隠しきれていなかった様だ。

元ヒーローで、顔に傷のある女は論外だ。
そう言われてしまえば、もう努力のしようはどこにもなくて。何も言い返せなくなってしまう。

この業界で働けないと言うのなら、私は一体どうやってお金を稼げば良いのだろうか。
こんなに割のいい仕事は他には無いし、もし例え他の仕事を寝る間も惜しんで働き詰めても、きっと思うように借金を返すことはできないだろう。

考えれば考えるほど向かう先は真っ暗闇で、希望も何も見えやしない。
当たり前のように突きつけられた現実に、なす術なく崩れ落ちるその様は、なんて惨めで哀れだろう。
不安と絶望で胸の中が一杯で、言葉が何も出て来ない。

「そう、ですか…。」とだけ返事をして、黙って引き下がろうとした私に、男は何かを思い出したかの様に「あ、そうそう」と言葉を続ける。

「もし君がどうしてもこの辺で働きたいっていうんなら、ここ、俺の知り合いがやってる店だから頼んでみるといいよ。今は人手が足りないみたいだから、きっと歓迎されると思うよ。」

そう言って渡されたのは、とある店の紹介カードで。
いくら私がそういう類のお店に疎いと言っても、それが風俗店の紹介カードであることぐらいはすぐに分かった。


それから直ぐに店を出て、人の波に呑まれながら行く当てもなく繁華街を歩き続ける。
さっきまで夕陽が差していた筈の空は、いつの間にか星のない夜空へと変わっていた。

これから一体、どうすれば良いのだろうか。
途方に暮れる心はもう何も感じないぐらい空っぽで。繁華街を行き交う人の喋り声が、徐々に遠のいていく。

少し歩き過ぎたからだろうか、さっきから脚の傷口がズキズキと疼いて仕方がない。
だけど、ここで立ち止まってしまえば、もう2度と前に進めなくなる気がして、どうしても足を止められなくて。

そんな中、不意に先程渡された紹介カードが頭に過り、何となく手に取り眺めてみる。

こんな仕事などあり得ないと、ガサツにポケットに突っ込んだのに。
今はもう、こんな仕事しか私に残されていないのだと、そう思えて仕方がない。

渡されたカードの店は、ここを曲がったすぐ先にある。どうやら私は知らぬ間に店の近くまで来てしまっていた様だ。

きっと、私が見知らぬ誰かに身体を開こうとも、悲しむ人など何処にもいない。
それに、別に男の人とそう言うことをした経験がない訳ではないのだ、今更私が失うものなど何も無い。

そう頭では思っているのに、知らない誰かが自分の肌に触れるところを想像すると、全身に悍ましいほどの鳥肌が立つ。
同時に、酷く大切に触れてくれた温かい手を思い出し、胸が張り裂けるほど苦しくなる。

私が身体を許した相手は、これまでたった一人だけ。
その人しか知らない私の身体は、明日を生きるためのお金と引き換えに、酷く穢れることになる。

でも、だから一体何だというのだ。
私の身体が誰に弄ばれようとも、ただそれだけのことなのだ。
きっと彼も私の身体がどうなろうとも、今更どうでも良いと思うに違いない。あんなに心底大事に私を抱いてくれた、彼はもう何処にも居ない。きっと今は私なんかよりもずっと素敵な女性をその腕に抱いて眠っているのだろうから。

ぎゅっとカードを握る手に力が篭る。
どこにも吐き出すことのできない酷く惨めな感情が、胸をぎゅっと握り潰す。

ここで私が自分の身体を惜しんだところで、彼が再び私を選ぶ日など来ないのだ。
それならば、今私がすべき事は、早々にその事実を飲み込んで、しっかりお金を稼ぐことだ。
知らない誰かに触れられるのだって、最初は不快かも知れないが、きっとそのうち慣れるはず。
だから、余計なことはもう何も考えるな。
そう自分に言い聞かせ、優しく抱かれたあの日の記憶に固い鍵を掛ける。


紹介カードに示される通りに道を進み、該当のビルの2階へと続く階段を見上げる。
この先に足を踏み入れてしまえば、もう元の場所には戻れない。知らない人に肌を晒してお金を稼ぐ私など、ヒーローとして頑張る皆の知り合いでいる価値すらない。これまでそれとなく遠ざけてきた友人とは、今回で本当に縁を切る事となるだろう。

気を緩めれば、今にも身体が震え出してしまいそうで、ぐっと奥歯を噛み締める。
大丈夫、辛いことは今まで通りに飲み込めばいいのだから。そう心の中で何度も呟きながら、一段一段と階段を上がっていく。

すると突然、背後から誰かに手首をパッと掴まれる感覚がして、ドキリと心臓が飛び跳ねる。
一体何事だと驚き、慌てて背後を振り返る。

狭く薄暗いビルの階段。
そのすぐ下には、どう言うことか、よく見知った青灰色の瞳がこちらを覗いていて。

紅白に揺れ動く髪が、目の前でサラリと揺れている。
その瞳も髪も、全て見知ったものなのに、目の前に広がる情景に理解が何一つとして追いつかない。

「名前、」

視線が絡まり合えば、酷く優しい声色で私の名前が紡がれる。
その瞬間、脳裏に溢れ出すのは、つい先ほど施錠したばかりの優しく抱かれた日々の記憶で。
無感情で目一杯に固めていた筈の心が、ボロボロと崩れ落ちていく。

「こんなところで、一体何してるんだ。」

そう続けられた言葉に、頭の中が真っ白になっていく。

ああ、一体どうして彼がこんな所に居るのだろうか。
何でよりによって、彼なのだろうか。

こんなの、ついてないなんてどころの話ではない。
本当の本当に、最悪すぎる。

この階段の先には、例の風俗店しかない。
そんな所に女の私が入るなんて、どう考えても普通じゃない。
自分の身体を汚してお金を稼いでいるのだと、そう彼に知られてしまったようなものだ。
いくら5年も経っているとは言え、過去に自分が抱いた女がまさかこんな事をしているなんて、そんなの失望しない筈ない。

もうこれ以上、彼に嫌われたくなど無かったのに。
せめて彼の中でだけは、あの頃の私のままで居たかったのに。
どうしていつも、こうなのだろうか。

こちらを見つめる彼の視線が、痛くて痛くて仕方がなくて。

気がつけば彼の手を思い切り振り解き、すぐ側にある裏路地へと走って逃げてしまっていた。



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