期限付きの恋人。うん、楽で良いね。
必要以上な煩わしさも恋愛感情も必要としないその関係は、一時の退屈や淋しさを取っ払ってくれる。
友達からは分からないと言われるけど、ちゃんと好きは有るんだから良いじゃない。
誰でも良いって訳じゃ無いんだから。
「でもさー、***と付き合った人って本当に良かったと思えてんのかなぁ」
「なによ、その言い方。あっちから付き合って、って言うからそれに応えるんだもの」
「つまらない筈は無い、って?」
頷けばふうんと適当な返事が返ってくる。
分からないなら別にそれで良い。口出しさえしなければ。
くっつけた机の向かい側に座る彼女は単に興味が無いだけなのか、余計な言及もしない。だからこそ、彼女相手にはこんな話も普通に出来る。
確かに、私を良く思わない子だって居るだろう。でも、男なら誰でも良い訳じゃ無いし、一人一人と身体を重ねた訳でも無い。
結局はお互い暇潰しであって、何も恋愛がしたくて私を選ぶんじゃないんだから。
「虚しくない?」
「……なにが」
「本気で想えないじゃん」
「万が一その時の相手が好きだと思えばちゃんと行動するし、別に」
前回の相手とも何日か前に別れたばかりだし、暫くはまた一人で良いかな。
そんな事を考えながら紅茶のパックに刺したストローをくわえ、最後にとっておいたお菓子の箱を向かい側の彼女に開けてと渡した時。
一瞬、教室に沈黙が訪れる。
戸が開くと共に一気に引いた喧騒の中、ある男性の声がやけに響いて聞こえた。
「***さん、居る?」
2011/05/15