星屑は零れるほどに
もうすぐ夏だというのに、指先を撫でる風は酷く冷たい。
縁側から見る夜空は今日も暗くて雲ばかりなのに、必死に目を凝らす自分は何を探しているんだろう。
「……総司さん、身体が冷えますよ」
「うん、寒いね」
「もう…薄着は駄目って言ったじゃないですか」
眉根を寄せた表情は怒っているのか困っているのか、ちょっと笑いそうになったけど本当に怒られるのは嫌だから我慢。
羽織りを肩に掛けてくれた彼女の手を引いて隣に座らせ、空いた片手を後ろに付いてまた空を見上げる。
「最近、月どころか星すら見えませんね」
「星?」
「総司さん、星を探してたんじゃないんですか?」
不思議そうに首を傾げられて漸く、先刻までこの目に捕えようとしていたものがなんだったのかを知る。
「***ちゃんはさ、星を見るなら先ず何を探す?」
「私が探す星、ですか?」
「うん。…教えてよ」
「そう、ですねぇ…やっぱり一番星でしょうか。一番最初に現れて、きらきらしてるのが綺麗」
「***ちゃんらしいね」
言いながらすっと持ち上げられた片手が指差した先には、分厚い雲の向こうで小さく瞬く一つの光。
微かにしか見えないけれど、確かに在った。
その指先を辿って見ればふと一つの疑問が生まれたけど、それを言ったら君は悲しそうな顔をするんだろうし、会話の一環だとしても落ち込ませてしまいそう。
でも、此れを尋ねてみれば、貰える返事に僕はきっと安堵する。でも、それでも、
「――…じゃあ、一番星を見付けるのは君の仕事だね」
「仕事?…見付けたら総司さんに教えるのが、私の新しいお仕事でしょうか。」
「うん。ちゃんと…見付けてね」
もし僕が星に成り得るなら、その瞳は何を捉えるのかな。
柄にも無く彼女が見付けた光に願ってみた此れは、…未だ我が儘のままで良い。
2011/06/24***