それは曖昧な夜に咲く


***ちゃんって、何型?

A型。

あーやっぱり

…やっぱりって、何

「***ちゃんってさ、結構面倒臭いタイプだよね」

「……………なに、今更」


そんなことわざわざ言われなくても、自分の性格なんて重々承知している。

それでも、人が傷付く事をさらりと言ってのけたメイトは隣でビールの缶を傾けた。


「いや、この前テレビで血液型の話をしててさ。A型のタイプを見てたら、まんま***ちゃんで笑っちゃったんだよね」


緩く瞳を細めながら笑うメイトに悪気は無いのかもしれないけど、流石に言って良い事と悪い事が有る。

幾ら私が相手でも、それは失礼なんじゃない?

無言のまま彼を見上げていれば、空いた片手を持ち上げるなり指折り口を開き始めた。


「変なところでこだわるでしょ、気にしない振りして結構傷付いてるでしょ、一人の時間が無いとダメなくせに誰もいないと寂しがるでしょ、」

「…待って、何個言うつもりなのよ」

「まあ聞けって。えーと、寂しがり屋なのにべったり過ぎるのも嫌、全部溜め込んで一気に爆発、裏表有るけど裏の顔はなかなか見せない。…どう?」

「……よくそんなに覚えていられたものね。」

「***ちゃんのことなら、何でも」


にっこりと効果音が聞こえそうな笑みに添えられた言葉は何処か遠くて、つまり、


「面倒臭いなら、嫌いなところが有るなら、はっきり言えば良いじゃない。」


思わず声が低くなる。

そんな私を見て一瞬きょとんとしたように目を丸くさせるメイトが、次の瞬間には苦笑に近い笑い声を漏らしながら少し乱暴に頭を撫でてきた。


「ね、それは裏の***ちゃんだよね。表の***ちゃんなら、軽く流しそうだし」

「知ったような口を利くのね」

「だってそうでしょ?他の皆は裏なんて見た事も無いだろうし、それを知ってるのは俺だけ」


確かに、他の人の前では当たり障りの無い、寧ろ少しだけ好意を持たれる様な態度ではいる。

でもそれは人付合い上必要なもので、メイト相手にこうなのは自分がマスターだからで――


「全部分かってるよ、…俺はね」

「…だったらなに」

「そんな***ちゃんが可愛いと思うのは、本当に***ちゃんが好きだから…ってことには、ならない?」

「っ…、し、知らない…」


たかが血液型で私を知った気になるなんて、そんなんじゃまだ、まだ私は、その言葉に喜ばない。


2011/08/21***


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