煌めきに沈む
暦上では大寒も過ぎたのに、だからと言ってこの寒さが無くなる訳でもなく。薄着で居た訳では無いが、やはり寒いものは寒い。
早足で隣を駆けて行く女子を見れば、さらけ出されたその脚が赤くなっているのが分かる。
幾ら校則とは云え、膝下のソックスもこんな時ばかりは目に優しくない。
ニーハイが駄目ならタイツでも穿けば良いにと度々思うが、彼女等にそんな選択肢は無いのか。
タイツも可愛いと思うが、それは彼女をイメージしての感想だと気付けば一人気恥ずかしく感じる。
何と無くマフラーに口元を埋めてみて、未だに現れないその彼女を待つ事数分。いや、十数分?
今出るといった内容のメールを受信してから一向にその姿を見せようとしない相手に溜息を漏らしたところで、くい、とマフラーを引かれる。
引かれるがままにそっちを見てみれば、待ちに待った彼女が息を切らせて立っていた。
「……鼻赤い」
「さ、寒い、から」
「俺も寒かったんだけど」
「…ごめんなさい」
嫌な寒気がしないでもない。
風邪だろうか。どうせなら思い切って熱が上がってくれれば良いのに。学校休めるし。
そんな事を考えながら、マフラーを引っ張っていた手に自分のを重ねる。お互い冷えている所為か温もりは感じられなかった。
「俺、明日休むかもね」
「だからごめんって」
「でも***に会えないで一日終わらせるのも味気無いし、…今から治る様に看病しといてよ」
「看病って病人にするものだよ」
「大丈夫、今すっごい寒気半端ないから。今すぐにでも病人になれそう」
二人で赤くした指先を握りあって、時折風にはためくスカートを彼女は空いた片手で押さえて歩く。
そんな様子を見ると、ズボンで通学出来ない女子は可哀相だと思わなくもない。
でも、
「やっぱりアリだよな」
「なにが?」
「何にもない。」
「なに」
「良いからコンビニ寄って帰ろうぜ」
見慣れたソックスだろうがタイツだろうが、彼女ならそれは特別。
2011/01/24***