君の真実に目を瞑る
「先生、あたしと付き合ってよ」
態とらしく目を丸くさせる相手に、ちょっとだけ睨んで見せる。
告白された女の子に睨まれるなんて、そうそう無いシチュエーション。あたしが告白される側だったら凄く嫌な気分。
でも先生はそれさえも気にしない様子で、あたしを見てる。
応えは無い。
もう一度、言ってみる。
「先生、あたしと付き合って」
「どうして?」
…どうして?なに、先生って馬鹿なの?
どうしてもなにも、好きだから言ったに決まってる。
椅子の肘置きに両手を付けて、片膝を脚の間に付けて、何だかあたしが先生を襲ってるみたい。
当の本人は座ったまま身じろぎさえせずに小さく笑みを浮かべた。
「俺が知る限りでは、君に嫌われてたと思うんだけどな」
「…そうだね、凄くいらいらする。」
「そんな相手と付き合いたいなんて…、罰ゲームか何か?」
「そういうところが嫌い」
でも、好きなんだよ。
こういう気持ちを真っ直ぐに受け取ってくれないところとか、答える気が無いのか窓の外を見始めてしまうその目とか、面倒臭そうに吐息を漏らす唇とか、なのにニーハイの縁をなぞって肌を擽るこの指とか。
本当に嫌われたいのか、あたしの気持ちを試しているのか。
むかつくね、先生。
「ここであたしが本気でキスしたら、答えてくれる」
「…普通、逆なんじゃないかなぁ」
「じゃあ答えてよ。それからキスするから」
「うーん…」
せっかちだね、なんて笑われてもあたしは一つも笑えない。
ねえ先生、あたしどうしたら良い?
「……先生、あたしと付き合ってよ」
「良いよ」
「なに、それ」
でも女の子って単純だからさ、好きな人に嘘でも気持ちを認められたら舞い上がっちゃうんだよ。
嬉しいって、思っちゃうんだよ。
やっとこっちを向いてくれた先生の唇に自分のを押し付けてみたら、凄くドキドキした。
何時の間にか離れていたらしい太股を撫でていた手が、肘置きに置いていた片手に重なった時、震えているのはあたしだけだと気付く。
ねえ先生、これも嘘で良いから…あたしにもちゃんと、好きをちょうだい。
2010/12/21***