疼いた腰を前後に揺らして、二枚目の閉じた筋に西谷の先端を擦り付ける。
「んっ、ん」
 早く欲しいくせに、焦らすような動きに夢中になっていたらオレをじっと見上げてくる西谷と眼があってしまった。
 西谷は息を呑みながらも、まるで純粋な子供みたいな目でオレのすることを見つめていた。なんだか、とてもいけないことをしている気持ちになって、これじゃ自分はまるで年端もいかない子に悪さする痴女だ。
 いやらしい興奮だけのせいではなく、顔が赤くなった。それを誤魔化すみたいに勢いよく腰を下ろすと二枚目にして最後の襞を分け入って西谷がぐっと膣に入ってくる。
「せ、狭っ……!」
 た、確かにちょっとキツイ、かも。 
「あ、あぁっ。ご、ごめんね……西谷」
「な、なんで旭さんが謝るんスか?」
「だ、だって……これじゃ、西谷も気持ちよくないでしょ?さっき、言われたとおりに慣らせばよかったね……」
「んなことないっす。旭さんのなかっ、気持ちいいっスよ。動かないで、このまま……ちっと、待ちましょう。そのほう、が旭さんも楽ですよね?」
 西谷は歯を食いしばりながら、オレを気遣ってくれた。
 嬉しいと思ったオレの正直な体はきゅうっと中の西谷を締め付けた。まだ中が十分柔らかくなっていないから、オレも半分くらい気持ちよくて、半分くらい痛い。でも、オレの場合は自業自得だからこれはしょうがない。あと、なんというか凄くエロい気分なので、痛いのすらもオレにとっては快かったりする。
 けど、心と体はある意味別ものでもあって、動くのは西谷の言うとおりちょっと無理そうだった。
「んあ!旭さんっ!」
 でも、オレに遠慮してじっとしている西谷は辛いだろう。
「ご、ごめんね……ちょっと、待って」
 オレは西谷を根元までずっぷりと銜え込んだまま両膝を大きく開いた。そして、西谷を銜えこんだまま半分以上開いた状態になっている割れ目から覗いている赤くちょこんと膨らんだものを指先で突いた。
「んあっ!」
 思わず大きな声が上がってしまった。予想以上に鋭い快感だったからだ。いつも、自分でする時より弱く触ったつもりだったのに、西谷の熱の塊を挿れた状態だと凄く敏感になってるのか一瞬で達ってしまうかと思った。そんなんじゃ嫌だ。せっかく西谷としているのに、それじゃ勿体無い。今していることは、せっかく迎え入れた西谷を離すのが嫌だから、自分で中の緊張を自分で緩めることだ。こんなんで一人でイクのはありえない。
 オレは自分の指を口の中に突っ込んで舐めて唾液を絡めると、再びぷっくりと膨らんだ芯をヌルヌルと小さく指先を動かして撫でた。
「あっ、ふっ……」
 すると、西谷の存在感を感じていた場所から異物感がなくなっていく。ああ、もう終わりにしなきゃ。でも、これ……気持ちいい。 
「いつも、そうやって……一人でするんスか?」 
「……え?」
「一人でするとき、そこをいじるんだ、旭さん」
「あぁ……見ないで、西谷」
 オレは左手を伸ばして西谷の目を掌で覆った。まるでオナニーを見られたような気持ですごく恥ずかしい。恥ずかしいのに奥の方がきゅぅっと西谷の先端を締め付けてまた気持ち良くなる。
「旭さん、見たい。旭さんのエロいところ」
 西谷がオレの左手首を掴んでぐいっと引きはがした。西谷の思わぬ強くて熱い視線が捲りあげあられた襞から除く皮が剥けて露わになった小さな突起と、彼自身が挿し込まれる悦びにトロトロと透明な粘液を溢れさせている割れ目に注がれる。
「っ!んっ、ああぁあ!」
 オレは自分で弄っていた場所を足を閉じて隠そうとしたけど、それより先に西谷の指がそこへ辿り着いた。
「はぁああっ!!」
 あまりの快感の大きさに体が勝手にビクンと痙攣する。閉じた眼の裏で火花が散った。
「う、わっ」
 オレのはしたない喘ぎ声と西谷の驚いた声が僅かな時差で上がった。
「あ、旭さんっ!急にそんなにしたらっ!」
 ごめんね、西谷。もう、オレ聞く余裕がない。半分以上イキかけてる……。
「にしのやぁあっ」
 もう、膣に含んで締め付けるだけじゃ焦れったくなって、オレは西谷の胸に手をついて腰をぐりぐりともっと奥へ促すように揺すぶる。
「あ、旭さんっ」
 くぅって呻いた西谷が止まっていた指を動かされて、今度はオレの方が悲鳴を上げる。
「に、にしのやっ。そ、そこやめてっ!」
 快感を振り切るみたいに、首を左右に打ち振る。サイドから落ちてきた短い髪が顔にまとわりつく。
「どうして?ここ、好きじゃないんスか?」
 ああ、恥ずかしいっ。西谷にこんなこと言われるなんて。こんなことバレるなんてっ。でも、もう嘘をつけるほどの冷静さはなくて、恥も外聞もあったもんじゃなくて。
「そ、だけど……な、中がいい。中でイキたい。オレの中、西谷ので擦って。西谷だけで、イかせてっ」
 ドン引きされそうな正気じゃとても言えない本音を吐き出して、快感と恐怖の紙一重の感情と感覚に震える。
 快感を抑え込み息を殺した僅かな沈黙の後、息を詰めていた西谷が幼さと残す可愛らしい顔を男っぽく顔を歪めてオレの名前を呼んだ。
「旭さんっ!」
 歯を食いしばった西谷はオレに腰を掴まれて下からガツンと突き上げられた。
「ひあぁっ!」
 そこからはもう、嵐みたいだった。
 西谷はオレの名前を何度も何度も呼びながらもどかしそうにそして激しく腰を動かしてオレの体を上下左右に揺さぶった。
「旭さんっ旭さんっ!好きですっ」
 時折入り混じる好きの言葉と膣の中で快感を露わにして存在を主張してそれが嬉しくて、気持ち良くて。髪を振り乱しながら何度もうなずいて西谷の名前を呼び返しながらイった。
 頭がおかしくなるくらい気持ちい。気持ちい。オレはイッたのに、それでもまだ繋がっていたかった。
 離れたくない、離したくなっていうみたいにぎゅぅ、ぎゅぅーっと膣が引き絞られれば西谷がオレの下で「旭さんっ、オレも……」とすごく色っぽい低い声を出したから、オレは体を前に倒して縋り付きながら耳元で囁いた。
「西谷も、オレでイッて……」
 



 強引に誘った後味の悪いえっちの後に、西谷がオレに謝った。
「すみません、旭さん」
 むしろ、オレが本当にごめんなさいって感じなんだけど。どうして西谷が謝るのかわからない。と、いうかすっかり落ち着いて着衣を整えた後の賢者タイムが訪れている今、『もう旭さんにはつきあえない』とか『二度と会いたくない、チョコレートもいらない』とか『さよなら』とか言い出されたらどうしようかって思って気が気じゃなくなっているオレはビクビクしながら西谷を伺った。
「な、なにが?」
 ああ、馬鹿。そこは流しておけばいいところじゃないか。なんで突っ込むんだよ。
「さっき、旭さんがどっかの野郎に肩を抱かれながらソイツの家から出てきたとき」
「うん」
「……なんか、変な気分になったんです」
「変な気分って……?」
「俺にもよくわからないけど、なんかイラっというかムカっていうか、それだけじゃなくって息苦しくなるような感じです。たまに、なるんです。龍に話したら、普通の反応だって言われて」
 それってもしかして……アイツが言っていたとおりのことなのかな?
「自分の好きな人が他の野郎とくっついてたりしたら、腹が立つし不安になるって。でも、俺は旭さんのこと信じてるんです。旭さんのつきあいに口出しするなんてしたくないし。えっちだって、誰とでもするような人じゃないって」
 嫉妬してくれてるんだったら、西谷には申し訳ないけれどオレはすごく嬉しいって思いながらドキドキする気持ちを抑えて聞いていたんだけど、ちょっと待って。最後の、待って!オレが誰とでもえっちするような人間じゃないって……オレ、西谷としかしたことありませんから!確かに、オレは……その、我慢できなかったり、飛んじゃうととんでもないこと口走ったりするけど、誰とでもヤるような人間じゃないし、何よりオレを相手に興奮してくれるのなんか西谷しかいない。
 オレは動揺のあまり口を開けたり閉めたりという無意味な行動を何度も繰り返した。
「でも、旭さんはすげぇ艶っぽい人だから……時々心配になるんです」
「いっ!!」
 艶っぽいって、なにそれ。誰のことだぁああ!?
 旭さんって誰?オレ!?
「いやいやいや、ないない!西谷、それはいくらなんでもないから!」
 きっちりと束ねた頭をブンブンと左右に振りながらオレは力いっぱい否定しまた。なんかもう、赤くなっていいやら青くなっていいやらわかんなかった。頼むからそんなこと言わないでくれよ、西谷。
「だって、旭さん……タバコも、移り香でしょ?」
 あれは移り香じゃなくって、吹きかけられた名残なんだけど……あ、でもアイツの部屋はヤニ臭いから長時間いたら匂いが服に映るかもしれない。
「だから、すみません」
 謝る西谷を見て、オレは自己嫌悪した。
 ああ、オレはバカだ。アイツの言うとおりだった。西谷は懐が広い漢前だけど、何も感じていないわけじゃないんだ。嫌な思いをさせてしまってたんだ。でも、オレのバカな行動を怒るでも詰るでもなく、許してくれた。
 オレは座っていたソファから立ち上がった。
「西谷。ちょっと待ってて」
 居間を出て、用意していたチョコレートを持ってくると西谷に差し出した。
「西谷……オレの方こそごめん」
 もう、来年からはチョコレートは西谷にしかあげないから。できたら、今年アイツに渡した義理チョコも回収するよ。
「旭さん、それはどうなんですか?チョコレートくれるのは嬉しんスけど、ごめんはないんじゃないですか?」
「あ!そ、そうだな」
 えーと、じゃあどう言えばいいのか。チョコレートに込めた思いは好き、だけど……言葉にするのは恥ずかしい。
 だからオレはまた頬が熱くなるのを感じながら西谷にキスをした。
 西谷もそれに応えてくれて、オレはキスに夢中になってしまった。唇を半開きにして誘うと、西谷がバッと顔を離した。
「旭さん……待った!今日二回目ですからね、この待った!一回は待ってもらえなかったんだから今回は待ってください!」
「西谷……」
「そんな顔してもダメです!もう、家の人が帰ってきたらどうする気なんスか」
 オレがあからさまに肩を落としたのを見て、西谷がぎゅっとオレのでっかい体を抱きしめてくれた。
「嬉しいんスけど、また止まらなくなるから……困ります。正直、オレは旭さんに困らされてばっかりっす」
「うん、西谷……ごめんな」
 ああ、しょうがないよな、オレって。好きな人を困らせてばかり。
 こんなデカくてゴツくて鈍くて、おまけにすぐシたがるような女でごめんな。
 西谷が笑いながら『だから、ごめん以外の言葉でお願いしますってば』と言ったから、オレは素直に気持ちを言葉にしようとした。
 こんなオレを抱きしめてくれてありがとう。一緒にいてくれてありがとう。大好きです。
「西谷、いつもありがとう」
 でも、悲しいかな。へなちょこでへたれなオレは最後の一言はどうしても声に出せなかったのだった。



  了


 
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