降るようなくちづけを受けて、家康は恍惚となり瞼がとろりと重くなる。
 触れるか触れないかの感触が心地よかったが、家康は自ら固く結んでいた唇を綻ばせた。自然と、緩んだという方が正確な表現だろう。
 家康は唇を半開きにして、三成のおとないを待った。
 地を覗き込む形の三成から、天を仰ぐ形の家康の口腔に再び舌が差し入れられる。
 家康がおずおずと舌を差出し、三成の舌に触れ合わせると、三成もゆっくりとそれにあわせた。
 粘膜と津液の絡み合う隠微な音に耳元を擽られ気恥ずかしさすら気持ちよく、夢見心地になった。
 しかし・・・穏やかで淫靡な戯れは長くは続かなかった。
 不意に三成が沸き上がった唾液をどっと家康の口腔へ注ぎ込んできたからだ。
「ぅん!」
 一驚した家康は、むせこみそうになるのをなんとか堪えると口の中のものを吐き出そうとしたが、三成がそれを許しはしなかった。
 掌を家康の口に宛がい抑え込む。
 あまりのことに家康は目の上目遣いに眼前に立つ三成を睨んだ。
 しかし、眉一つ動かさずそれを受け流した三成は膝を折り、顔を家康の耳元に近づけけた。
「許さん。吐くな。嚥下しろ」
 低い押し殺した吐息交じりの三成の囁きが家康の鼓膜を侵す。
 冷たく言うくせに、酷く焦れているその様が家康の下腹を疼かせた。
 何が三成をそうさせるのか・・・家康はそれが何か知りたかった。
「ふ・・・」
 むずがる童のように首を竦めると、家康は鼻声を洩らし三成の口元を強く抑え込んでいる手に、自らの手を重ねた。掴むのでもなく、振り払うのでもなく、そっと三成の手に触れる。
 すると、何も言わずとも三成は家康から手を引いた。
 三成を見れば、美しい朽葉緑黄の眼を見開いてじっと家康の顔をうかがっている。まるで頑是無い童のようなまなざしだった。
 観念して家康は目を閉じると、口の中にたっぷりと含まされた三成の唾を喉を鳴らしてごくりと呑み込み、細波のように身を震わせながら遂情した。




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