穢土転成後の芸術コンビ
「え、ちょ…ホントに旦那…?」
「たりめーだろ。長い付き合いだってのに俺の顔も覚えてねーのか」
「いや違うって!けどよー…」
そう。どう見ても前の旦那とは違っている。顔つきが大人びて、少しだけ髪も伸びて、それから、認めたくないけど身長も…。穢土転成されて本来の年齢の生身の体になったってワケか?
「前はオイラのが高かったのに…うん」
「残念だったな。もう死んでるから背なんか伸びねぇよ」
旦那は嫌味ったらしげな笑みを浮かべてそう言う。見かけは変わってもこの腹立たしい笑い方だけは今でも変わらないんだな。そう思っていると、ふと旦那が何かを思い出したように顔付きを変えた。
「そういや…今日は5月5日だな」
「え?あ…」
言われてみれば、確かにそうだ。けどなんで旦那がそんなこと気にするんだ。もしかしたりすると、自分の誕生日を覚えていてくれたんじゃないかと期待する。
「こどもの日、ってやつか」
「…期待したオイラがバカだった」
「冗談だ。お前の誕生日だろ」
このヤロウ…確信犯だったな。まあ生前だって旦那からプレゼントなんてもらったことなかったから忘れられてると思ってたけど。覚えていてくれたことに嬉しかったりする。
「そうだけど…もうそんなもん意味ねーよ。死んでるんだし」
「まぁな。19ん時死んだってことは…もう一生ハタチにはなれねーのか」
「別に、無駄に歳とるよりは良かったんじゃねーの?うん」
「けどよ」
「うん?」
「いや…お前が大人になった顔ってのを、見てみたかったけどな」
オイラより一回り大きな手が、頭の上に乗っかり撫でられた。いつもは自分と同じ目線の辺りにあったのに、今では旦那の顔を見上げる形になってしまう。それと旦那の声がどこか淋しげだったのが、誕生日くらい何とも思ってなかったはずが今日は何故か特別に思う。
「…本当だったら今日からオイラも大人だったんだぜ?」
「もうそいつは叶わねぇけどな」
「祝ってくれないのかい?」
「そうだな…永遠の19才ってのなら祝ってやるよ。こどもの日らしいだろ」
「ははっ。こどもってのが余計だぞ旦那」
永遠の19才
まあでも、悪い気はしないけどさ
ほのぼのということで甘め目指してみました
リクエストありがとうございました!
2012/0505