現パロ
「ど、どうしたんだその顔…ッ」
久しぶりに旦那の家に行ってみれば、オイラと会わない間に何があったのか顔面引っ掻き傷だらけの旦那の姿。思わず扉を開けた瞬間「うわっ！」と声を上げてしまった。旦那はというと、相変わらず無表情のまま玄関に突っ立っている。何も言わない旦那に再び声を掛けようとしたとき、にゃーと足元から可愛らしい鳴き声が聞こえた。
「あ、コラ勝手に出るな」
そこにいたのは、身体の小さい黒猫。旦那はそれをヒョイッと抱き抱えるとさっさと中に入っていってしまった。取り残されたオイラは戸惑いながらも旦那の後を追う。
「旦那って猫飼ってたっけ？」
「ついこの前拾った」
「じゃあ、その顔の傷も…」
「あぁ、こいつにやられた」
そう言いながら「なかなか懐いてくれなくて大変だったんだ」と旦那は猫の喉を撫でながら続けた。その表情が普段の旦那からは想像できないほど優しくやわらかいものだったから、オイラは胸の奥が熱くなったことに気付く。オイラからしてみれば、猫は嬉しそうに見えるんだけどな。旦那の顔を引っ掻くようにはとても見えない。
「でも、けっこう可愛いな！」
そう言って猫を撫でようと手を伸ばした瞬間、今までいい子にしていた猫が歯を剥き出しにして「シャーッ！」と突然オイラに威嚇する。その顔の変わりように、思わず伸ばした手を引っ込めた。
「ビ、ビックリした…！」
「気をつけろ。この猫初めての人間には警戒心強いからな」
「そうなのかい？」
「こいつ、捨てられてたから」
旦那はそう言って気が立った猫の頭を撫でて落ち着かせる。旦那の言葉にオイラは思わず顔を歪めた。
捨てられてた…？
「ぁ……じゃあ旦那のときも…」
「まぁな。家に連れ帰るときなんて必死に藻掻かれてこの様だ」
「めちゃくちゃ痛そうだぞ…うん」
引っ掻き傷からは所々血が滲み出ている。それなのにあの旦那が、気が短い旦那が見捨てもせずに愛情を注ぎ込むなんて。道端でダンボール箱を見つけて、引っ掻かれながらも猫を抱えて必死に連れ帰る旦那の姿が目に浮かぶ。なんだか、無性に旦那への愛しさが込み上げてきた。
「旦那」
「あ？」
「あんた、いい人だな」
「…勘違いするな。俺はただ自分の都合でこいつを捨てた人間が許せないだけだ」
「はいはい」
口ではそうは言ってるけど、本当はほっとけなかったんだと思う。両親を幼い頃に亡くした旦那だからこそ、おいていかれる気持ちは痛いほど知っているはずだから。愛情を知った分、愛した人がいなくなったときに自分が傷つくことを知った旦那は、誰よりも孤独を恐れる人になってしまった。いつか大切な存在が自分の目の前から離れていってしまうくらいなら、自分の方から突き放すんだ。そんな、人間を信じることができない、人間嫌いの旦那。まるでこの黒猫みたいだ。
「旦那」
「今度はどーした」
「好きだよ」
そう言ってオイラは旦那の背中に後ろからギュッと抱きつく。離れてなんかいかない。ずっとオイラがそばにいるから。そう思いながら旦那の背中に身を擦り寄せた。しばらく動かなくなった旦那は「…ん、」とだけ返事をすると、振り向かずに手を後ろにやってオイラの頭を撫でる。あ、旦那耳赤い。思わず声に出そうになったけど、前にそんなことを言ったら振り払われたからやめておこう。今は旦那の優しさを感じていたい。
「…デイダラ」
「ん？」
「したい」
旦那の言葉にオイラは落胆する。てっきり俺も好きだとか大体そんな感じの言葉を期待していたから、がっかりしたことを隠しきれなかった。だって、いきなりすぎるだろ。もうちょっとムードってのを考えてほしい。
「雰囲気ぶち壊しッ！」
「いいじゃねぇか。お互いご無沙汰なんだしよ」
「でも…」
「…あ？それとも何か？お前は俺の知らない間にどこぞの誰かとヤってたってのか？」
「はっ？いみわかん「俺というお前には勿体無さすぎの男がいながら、ふざけんなよデイダラ」
「ちょ、変な妄想やめてッ」
旦那ってたまに一人で突っ走るときがあるからヤなんだよなあ。当の旦那は嫌らしい笑みを浮かべながら「ならさっさと脱げ」と上半身の服を取り去った。ジーパン姿で急かされれば、もうこの人止まらないだろうと諦めて、渋々オイラも服を脱ぎ始める。悔しい。オイラのときめき返せ。そして上半身の服を脱ごうとしたそのとき、いきなり旦那にグンッと腕を引かれた。
ドサッ
「っあ！」
「遅い。待ちきれねぇ」
奥の部屋に連れ込まれてベッドに仰向けに押し倒されれば、両手を頭上で一つにくくり上げられてもう逃げられない。スルリと冷たい手が服の中に忍び込んで、腹から肋骨近くを撫で回されれば、思わずビクッと体が跳ね声が上がった。それから首筋に舌を這わせられた次の瞬間、痛いほどそこを吸い上げられる。
「ぅあっ！やっ…」
「あ、悪ぃ…久々で加減が効かねぇ」
うぅ、と小さく唸りながら旦那を見れば「悪かったって」と目を細めて言われた。噛まれた。絶対に歯ァ立ててたろ。髪もふわふわで性格も猫らしいのに、セックスまで獣のように荒々しくされたんじゃ堪らない。旦那はオイラが痛がらないよう気を遣っているのか今度はやさしく首筋にキスをする。
「っ、…んぁ…っ」
それと同時に旦那の手が胸の突起を指先で押してくるものだから、思わず上擦った声が漏れる。くらくらと眩暈のする快楽に、体が火照ってきているのがわかった。無意識の内に腰がもどかしく揺れる。それを見た旦那の顔は楽しそうに笑っていた。
「お前ここ弱いもんなあ」
「あっ…あぁっ…やだ…」
「ククッ、なら体に聞いてみろよ？」
「う…っぁ、は…っ」
ズボンと下着をいっぺんに脱がされて、旦那の指がそっと後ろの蕾をつついた。するとオイラの身体はビクッと跳ね上がる。旦那は蕾を指で押し開くとその中にぐ、とその指を挿し込んできた。そこは指を締め付けるようにヒクつく。
「ふぁ、ぁっ…！」
中で掻き回しうごめく指に蕾を拡げられる刺激に声を抑えきれない。口を塞ごうとしたけど、旦那に片手で両手を掴まれているためどうにもできない。仕方なしに唇を噛みしめて快楽に耐える。けれでも旦那は声が聞こえなくなるのは物足りないようで「声、我慢すんなよ」と熱の籠もった声で囁かれれば、もうオイラはただ乱れることしかできなかった。
「あ、うぅ…っ」
「いい子だ」
そう旦那に言われて、額にキスをされる。恥ずかしさに耐えきれずオイラは旦那から顔を背けた。けれど旦那は指を増やして内壁を擦り強めに爪を立てる。そのとき、微かながらも前立腺を指が掠めた。
「ふあぁっ！」
「ここがイイのか？」
「やあぁ！そこっ、やだ…！」
ゾクッ、と体が跳ねる。それでも旦那はオイラの感じやすい箇所ばかりを攻め続け、その度オイラは犯される熱に身体を仰け反らせた。
「あ、っ、やぁあ…！」
自分でも驚くほど息を切らし甲高い声が出て、腰がガクガクと震えているのがわかる。激しい旦那の愛撫に、オイラの感度は最高潮に高まって甘い吐息が漏れる。さらにイヤでも耳から聞こえる水音が、オイラの理性をよけいに煽り立てた。
「ふ、ぁ…んぅ…っ」
腕を掴んでいた旦那の手が離れたと思ったら、その手はオイラの自身を扱き上げる。すでに先走りを零していた先端から蜜が増え、そろそろ限界を迎えそう。
「もういいか」
「だ、んなぁ…っぁ、もうっ…」
「俺も、そろそろ限界だ」
蕾の中で動かされ続けた指が抜かれ、旦那に脚を広げられる。ガチャガチャとベルトを外す音がして、旦那はその後孔に自分の自身の先をあてがった。秘部を見られる恥ずかしい格好をさせられて羞恥心に襲われる。
「ぃ…やだ、旦那…っ、こんな…っ」
「その顔、そそるな」
「いやぁっ…！」
途端に顔が熱くなって、旦那に背を向けてシーツに顔を埋めた。すると旦那は先ほど付けた首筋のキスマークに唇を重ねる。そして熱く猛った自分自身をオイラの後孔へ前進を始める。ギシ、とベッドのスプリングが鳴くのを聞いた。
「ふぁ、あぁあっ…！」
十分に慣らされた後孔は、すんなりと旦那の自身を飲み込む。卑猥な水音が部屋に響き渡った。
「はっ……あぁ…っ！」
欲望のままに己の自身で中を突き上げてくる激しさに、オイラは腰を揺らして快楽を受け止める。シーツを握り締めて耐えるオイラの手の上から、旦那の手が重なる。いきなりのことに、心臓が高鳴った。お互いの身体の隙間がなくなるくらいに、オイラ達は淫らに相手を求め合った。
「ん、あぁ…もう、だめっ…！」
「っ…デイダラ…ッ」
オイラの限界を察知して旦那は腰をグッと押し付け、旦那のモノがオイラの最奥を突き立てた。オイラの両脚の太ももを掴んでさらに脚を開かせる。ラストスパートを掛けるつもりなんだろう。腰の動きがどんどん速くなる。
「あっ、あ、んぁあっ…！」
「っ、すげ…締まるっ」
「ひぅっ！あ、あぁあっ──！」
オイラは身体をビクンと震わせ、欲望を吐き出した。旦那もその後締め付けに耐えられずに中でイったようだ。旦那が自身を抜いて、オイラは力が抜けて息を切らす。
「だ、んなのバカヤロー…」
気だるい体をベッドに預けたまま余韻に浸る。旦那もオイラと同じように久々のセックスに疲労が溜まったようで頬を赤くして息を乱していた。
「オイラはそんなつもりじゃなかったのに…」
「でも、気持ちよかったんだろ？」
「あ…、ぅ…」
ぐ、とその言葉に狼狽える。そんな顔してそんなことを言われたら、もう嘘なんかつけない。恥ずかしげに小さくコクリと頷くと、旦那は優しく微笑んでオイラの髪を撫でた。なんだか、すごく疲れた。眠気に襲われて瞼が閉じそうになる。旦那はそんなオイラに気付くと、その手を目元にやった。「おやすみ」と言う大好きな心地いい声に安心して、そのまま目を閉じる。
「俺も、好きだ」
表情は見えなかったけど、
旦那の声が聞こえた。(気がしたんだ)
黒猫
そんな人間嫌いな彼でも
自分だけに好きと言ってくれる
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零様へ↓
リクエストありがとうございました！
甘い感じにするつもりが、旦那がただの変態になってしまい…orz
甘い話は大好きなんですが、文章にするのは難しいことを改めて感じました
もっと文章力磨きたいです(´Д｀*)
こんなものでよければ、どうぞ！