※ネタバレ 勢いに任せて殴り書き







「おい!!出せってばッ!!」


オイラは今、敵に捕まって体を拘束されている。自分を閉じ込める傀儡が旦那のものだったこと、体に巻きつくホースが以前の旦那の体の一部ということが何より皮肉だ。どうにもこうにもじっとしていられずガンッ、と少しだけなら動かせる足で傀儡を蹴り、何度も大声を上げる。だが、返事はない。


「……出せっ…」


か細い声が耳に響く。
旦那が、死んだ。
もうどうしたらいいのかわからない。頭の中をぐるぐると駆け巡るのは、最後の旦那の言葉だった。旦那はオイラより、家族を選んだんだ。


「……」


ふざけんな、とぼそりと呟く。やっぱりあんたは最後まで自分勝手だ。誰よりも孤独を恐れ、自分の身近な人間が消えることに怯えたくせに、自分はさっさと死んで逝くのか。一人取り残されることが大嫌いのくせに、オイラをおいていくのか。


「……ハッ…」


嘲笑を抑えきれない。二度もおいていかれるなんて思ってなかった。最初のときも、旦那は自分勝手だった。まさか旦那が殺されるはずがない。そう思っていたのに、旦那の元に行ってみれば核を一突きにされて死んでいた。おそらく祖母と闘っている際に、情が揺らいだんだろう。その証拠に旦那の死に顔は家族の傀儡に抱きしめられてかとても幸せそうだった。ばか、うそつき、死なないって言ったじゃないか。その憎しみを込めた言葉すら、もう彼には届かなかった。
そして今、旦那はオイラをおいて先に逝ってしまった。旦那の幼い頃に彼を残して死んだ、家族のもとに。


「……っ…」


死んで芸術になった日、あれが終わりならよかった。それならこんな哀しい思いなんて知らずに済んだのに。世界の醜さなんて、これ以上見たくもなければ知りたくもない。あのときはまだよかった。自分の体が自分のものだった。けど、今は違う。自分の体は誰かのもの。あのときのように自分の意志でオイラはオイラをやめれない。
オイラ、これからどうなるんだろう。真っ暗で何も見えない。今ここがどこなのかもわからない。一人この世界に残された不安、不明瞭な自分の運命、そのすべてに支配される。こんな思いするくらいなら、いっそのこと死んでしまいたい。旦那、今ならあんたの気持ちが少しはわかるよ。残されるのはこれほどになく寂しく、哀しい。けれども、この心臓に刀を突き立てられたってオイラは死なない。そんなものじゃ、死ねないよ。この腐りかけの心臓は、何度刺したところで何度でも再生する。何かが魂の縛りを解いてくれない限り、自己満足でなければ死ねないのだから。
旦那、その答えをあんたは知っているのでしょう?閉じ込められていて表情はわからなかったけど、最期を迎える旦那は笑えていたかい?(それなら、)
オイラはまだ答えを見つけられない。まだ、死ねない。だからあんたがいなくてもオイラはこの世界で生きてみせる。悪人なら悪人らしく、とことん汚れて醜く生きてみせようじゃないか。死の理由を見つけてこの世界で最後を迎える、そのときまで。











腐り続けても僕は生きるの




この先も今もないまま
一体どこまで堕ちていくのか