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▼ 皇帝と女帝の戯れ




「カナメ様?」


じっとカナメを見つめる海の色をした双眼に、思わず返事もせずに同じようにじぃと見つめ返すのは名を呼ばれたその本人。自分の顎に手を添え、ふむと考え込むように無言で見つめるカナメの様子に不安げに思考を巡らせるのは菊華で、思わず目をそらす事もなく同じように見つめ返しては瞳の奥を覗いてみたり。

いつもなら名を呼べばすぐに返事を返す恋人の様子が明らかにおかしい、おかしい事は分かるのだが、だからといって彼が今何を思って自分に視線のみを向けているのか菊華には分からず。

数秒、もしくは数分。じぃと見つめ合っていれば、先に表情を崩したのはカナメの方で。ふ、と口元に笑みを浮かべれば、そのまま眼尻が下がり瞳には甘ったるい感情を載せて目の前の彼女を見つめ、そのまま流れるようにするりと頬を撫でてみせて。
唐突な行動にピクと小さな反応を零す菊華は未だ状況を探るようにカナメをじぃと見つめているが、当の本人はそんな視線を受けても楽しそうに笑うばかり。


「東に教わった遊びをしようと思ったのだけれど。…ふふ、失敗してしまった。」

「遊び…?…ルールの説明もなしに?」

「はは、そうだね、ズルをしたから負けても仕方がないか。」


普段からあまり表情の変化がない菊華だが、それでも少し拗ねたような口調がカナメには愛らしく、思わず顔が緩んでいく。


「にらめっこ、というらしい。見つめ合って、笑った方が負け。」

「笑った方が…。……私の顔、何処か変なところが?」

「いや、違うよ。…ふふ、なんだ、いざ口に出すとなると照れてしまうな。これも罰か。」

「カナメ様?」

「……私の美しい恋人が可愛らしく見つめてくる物だから、思わず頬が緩んでしまった。」


白い肌に朱を載せて笑うカナメに、数秒遅れで、言葉の意味を理解した菊華の頬も染まっていって。
何処までも愛らしい恋人の姿に不意打ちで唇を重ね、耳元で愛を囁いて。さて次は君と共に、どんなゲームをしようか。




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