同僚に、買い出しに行く旨を伝え キャバクラの裏口から必要最低限の物だけを身につけて出る。ここから大江戸スーパーまではかなり距離がある。歩きで行くしか手段が無いので、行きも帰りも少し憂鬱だ。(帰りは荷物があるから更に)
果物、マヨネーズ、今日買う物はこれだけで良かったからまだマシな方だ。
大江戸スーパーは、キャバクラの裏口からは逆方向なので、表通りに出、キャバクラの玄関口を過ぎようとしたら 先ほどの副長さんが煙草をくわえながら玄関にもたれて立っていた。この人は何をしても様になるな。ペコリとお辞儀をして通り過ぎようとすると、首後ろの襟を勢い良く掴まれ片手で持ち上げられた。怖い怖い怖い怖い怖い。この人怖い!

「はははなななな、はなしてください!」
「うるせェ、遅ぇンだよ何分待たせるつもりだ!」

待たせる…?
私は一度でもこの人と待ち合わせの約束でもしていただろうか?していない、気がする…。なぜ私は怒られているのだろう。私はあなたのためにマヨネーズを買いに行くというのに。傲慢だ、傲慢男だ。じとりと効果音の付きそうなほどの据わった目で彼を振り返れば、ンだその目は。とチョップを食らった。ひどい。宙に浮いていた身体を、やっと地面へと降ろして貰い 身なりを整える。男性が苦手な私には、今のような過度なスキンシップは心臓に悪い。荒くなった呼吸を整えながら、いったい何のご用でしょうか と問うと、鼻の頭を人差し指で掻きながら 黙り込んでしまった。


「…あの」
「………、大江戸スーパーか」
「え、あ、買い出し場所ですか。はい」
「…遠いだろ」
「はあ…、でもいつものことなので」
「…あーもう。マヨネーズだけの為に買い出しに行く羽目になったンだろが。俺の責任だ、送る」
「え…い、いいですいいです!そんな!私の仕事なので!」
「うるせェ!黙ってついて来い!」


お、横暴だ。半ば無理矢理送り迎えをして頂くことになってしまった。副長さん横暴だ。しかしこんなことは初めてだ。こんな男性も。
ただし送るっつってもパトカーだかんな と、振り向きもせず駐車場へと進みながら副長さんは言う。足が長いのだろう。歩幅が大きい。置いていかれそうになりながら、大きなその背中を追いかけた。









20120823
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