「みたらし、そいつは明らかにお前を付けて来てたんだな。」

本格的に昨晩の事についての事情聴取が始まった。私の場合は土方さんがたまたま居てくれたから事なきを得たが、他の狙われた女性達はそうでも無かったらしい。1人目は私と同じく帰宅中に後を付けられ、2人目は持ち物を盗られ、そして3人目は話しかけられ髪を引っ張られた後 人違いだ、と声高々に叫びながら軽く頬を叩かれたらしい。身震いした。
しかし勝手に付けて来といて人違いだから叩くとは何事か。女性に手を上げるなんて。

「犯人は恐らく特定の奴を探してる。昨晩でのみたらしの話も踏まえると同一犯だ。探してる相手に異様なまでに執着してんだろうな」
「執着…」
「そうだ。…みたらし、今日も仕事あんのか」
「あります。昨日と同じ時間に出勤退勤です」
「休め」
「無理です」

そう言うと、土方さんはあからさまに大きくため息を吐いた。私だって昨日あんな事があった中、出勤したくありませんよ。だからといって、休む訳にはいかないし。あの地味な裏方の作業はなかなか骨が折れるのだ。私以外にも一応もう1人裏方の人がいるのだが、最近入った新人さんなので1人だけにしてしまう訳にもいかない。不都合というのは色々重なるものだと実感した。

「…ったく、わぁったよ。今日はたまたま近藤さんがキャバクラに用があるらしいから、近藤さん迎えに行くついでに お前も家まで送ってやる」
「い、いけませんそんな!わざわざっ」
「うるせー。黙ってお巡りさんの言う事聞け」

不覚にも、土方さんの発言にきゅんとしてしまい黙った私を 土方さんは肯定と見たのかわずかに口角を上げて「よし」と私の頭を撫でた。丁度良い所に私の頭があるからだろう。よく頭を撫でられる。
…子供扱いされているのだろうか。撫でられる事は嬉しかったけれど、恋愛対象として見られていない気がしてちょっと癪に触ったので 頭の上の大きな手を両手で掴み、きゅっと握ってやった。私の意外な行動に驚いたのか、土方さんは一瞬ぽかんとした後すぐ慌てて私から離れ背を向けた。

うわ、なにやってるんだ私、と自己嫌悪に陥りながら土方さんの後ろ姿を見上げると 私の考えに反して、彼の耳は真っ赤に染まっていたのだった。照れて、いるのだろうか。意外な土方さんの反応に「何見てんだ馬鹿野郎」と言われるまで、ただただ私の口角は笑みの形を作ってしまっていたのだった。











20121120
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テーマ「人外ファンタジー」
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