人生で初めて、パトカーに乗った。右隣の瞳孔が開ききった男性の存在が、私の右半身を緊張させている。緊張しながらも、頭の中は他の事ばかりを考えていた。
今日来店した真選組。真選組といっても人数はわずかだったが、こんな時間帯に政府の警察がキャバクラなどに来ても良いのだろうか。現在は、19時を過ぎた頃。普通のサラリーマンなら、まだディスクでパソコンと睨めっこをしているハズの時間帯である。…サボりか?この副長さんも、副長という立場でありながらもサボっているのだろうか。

「…イヤイヤ、そんなサボる様な人には見えないむしろサボったらこの人に殺されそう」
「何ブツブツ言ってンだ。おら、着いたぞ」

コツンと頭を軽く叩かれて我にかえると、そこはもう大江戸スーパーの駐車場だった。車で行くとこんなに早く到着するのだな、と感心していると 副長さんが 置いてくぞ と先に歩いて行ってしまった。もう置いて行ってます。
副長さんの後ろを急ぎ足で付いて行くと、一番に向かった先は調味料コーナーだった。副長さんは無言で買い物カゴにマヨネーズを放り込む。しかしその量は尋常ではない。ちょっと待ってそんなにいりません。
マヨネーズは最高2本あれば、このキャバクラでは1ヶ月もつ。なのになぜ、2桁を越える量のマヨネーズを購入せねばならないのか。

「あ?お前、こん位ねぇと絶対すぐ無くなるだろ。」
「いえいえいえいえ、2本あれば十分です」
「2本だァ?1日で無くなるだろうが」

そんな馬鹿な。どんなマヨネーズの使い方してるんだこの人は。マヨラーなのかな、異様なまでのマヨネーズへの執着がありありとわかるし。
少し気になって、マヨネーズお好きなんですか?と問うと、マヨネーズは何にでも合うオールマイティーアイテムだからな。と自慢気に返された。何にでも合うとは思わないが、別にマヨネーズが嫌いな訳ではないので黙っておこう。とりあえず、副長さんが今日2本消費すると計算し、全部で4本ということで譲歩して貰った。ああ疲れた。

「他は?何か買わねえのか」
「あと、果物全般が足りなくなっていたので果物を…」
「そんならこっちだな」

自然に果物コーナーへ向かう副長さんの後ろ姿を見てふと思う。私、男性が苦手なのに。苦手な筈なのに、副長さんと話すのは余り緊張しなくなってきた。未だにキャバクラで働く同僚(男性)とは 話すことはおろか目を合わせることも苦手なのに。
この副長さんが、思ったほど怖くない人だからだろうか、現在もこうして 自分の責任だからと買い出しに付き合ってくれている彼の優しさや、極度のマヨネーズ好きという一面を見つけてしまったからなのだろうか。
果物コーナーで、興味深そうに特売のドリアンを手に取っている副長さんを眺めながら、私の頭の中はモヤモヤと霧がかっていた。









20120827
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