場所は真選組屯所。
あのあと、詳しく先ほどの出来事について聞きたいから と副長さんに連れてこられたのだ。しかし時刻はもう深夜。さすがの鬼の副長にも、一般人しかも被害者から、深夜に事情聴取をする気は起きないらしく、部屋を貸してくださることになった。
…本当は、私がまだ少し震えていたから、わざわざ屯所まで連れてきてくれたのだと思う。遠回しな優しさに自然と笑みがこぼれた。

「客間が空いてりゃ良いんだが…あー駄目だ空いてても布団の場所とか俺知らねェ」

さすがにこの時間に女中を起こす訳にゃいかねえしな…。
と後ろ頭を乱雑に掻きむしりながら副長さんは呟いた。

「あ、布団は無くても大丈夫です。手間取らせてすみません」
「あ?風邪引かれる方が困るんだよ。…ちょっと付いて来い」

何かを閃いたのか、副長さんは早足で移動を始める。置いていかれないように付いて行くと、1つの部屋へと辿り着いた。ちょっと待ってろ。と襖の前で置き去りを食らう。副長さんは1人部屋の中に入ってガサゴソと物音を立てていた。ちょっとすると、「入れ」という声が聞こえた。恐る恐る襖を開けて中を覗き見ると副長さんは床に布団を敷いている最中だった。
部屋を大きく見渡す。仕事中だったのだろうか、たくさん書類の乗った机が一つ、そして小さなテレビ、部屋にはそれしかなかった。シンプルである。
ここが、副長さんの部屋なのだろうか。

「おい、俺の部屋で悪ィが今日はここで寝ろ」
「へっ、で、でも副長さんは」
「俺はまだ書類残ってっから、今日は寝ねぇよ。あぁあと安心しろ、俺は女の寝込み襲うほど落ちぶれちゃいねぇ」

そんなことは心配していませんが…。好いた人の側で寝るなどという高度な技、私に出来るのだろうか。ぐるぐると思考回路が渦巻く中、色んなことが起こりすぎて私の脳はピークに陥った。爆発である。うあ、とか えう、とか日本語を喋ることが出来なくなった私に、副長さんは呆れたような目線を寄越して少し笑った。
オラ早く寝ろ。と頭を軽く叩かれて布団に向かう。潜り込むと温かくて、緊張していた体がやっと解れた。副長さんへと目をやると、彼はもう書類を始めている。順応性に驚きだ。

「…副長さん」
「…おー?」
「ありがとう副長さん。本当に、ありがとうございます」
「…おー」

照れたかのように、耳を赤くして筆を何度も墨につける副長さんに自然と笑みが溢れた。
あぁ、みたらし、と副長さんが私の名を呼び、顔を向けると「副長さんじゃなくて、土方十四郎な」と言われた。…それは、どういう意味ですか。名前で呼んでも、良いんですか。そしてなぜ、私の名前を知っているのですか。色んなことに、期待して 自惚れてしまいそうです。








20120930
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