無事買い出しも終え、パトカーに乗って元来た道を戻る。パトカー内はトランシーバーが付いていたりよく分からない様々な色のボタンが付いていたり、と、興味をそそられるものがたくさんあり、好奇心に負け何度か車内をいじろうとしたら怒られた。男性が苦手な私がなぜ、こうして副長さんと平気で話せているのかは正直よく分からない。果物コーナーで一生懸命それについて悩んだものの、ドリアンにマヨネーズかけてもけっこうイケそうだな、と真剣に呟く副長さんを見て、考えるのが面倒になってしまってやめた。絶対イケないと思う。

「…いっつも一人で買い出ししてんのか」
「あ、はい」
「あそこから歩くには遠くねェか、このスーパー」
「そうですね…でももう慣れました」
「最近夜は物騒だからな、まァ気をつけろや」
「ありがとうございます」


取り留めの無い話だが、言葉の端々に優しさが見える。面倒見の良いタイプなんだろうなあ。
副長さんとの会話も静かながらに弾み、次の交差点を右に曲がればキャバクラに着く という所で、副長さんは急にパトカーを加速させ交差点を勢い良く左に曲がった。シートベルトをしていたから問題は無かったが、もししていなかったら吹っ飛んでた。絶対わたし吹っ飛んでた。余りのスピードに目を白黒させながら副長さんを見ると、「尾けられてる、多分攘夷志士だなありゃ。悪ィが付き合ってくれ」と華麗な運転さばきでクールに言われた。先に言ってくれ。
バックミラーを見ると、確かに不自然な動きで私達が乗っているパトカーを追う黒いワゴン車がある。狭い路地なので、あの車だと勝手が効かないのだろう。パトカーとワゴン車の間はあっという間に開き、副長さんは人目の無い小さな無人駐車場にパトカーを停めた。

「撒けました…かね?」
「多分な。だが店から距離はそんなに離れてはねぇ。このパトカーに乗ってたら確実に狙われるからな、とりあえず歩いて店まで行くぞ」
「え、でも」
「一般人のオメーを巻き込む訳にはいかねえだろが。おら行くぞ」
「わ、待ってください」

真選組の仲間に連絡をしているのだろうか、携帯で誰かと会話をする副長さんの目は先ほどまでと打って変わって、なんというか、その、かっこよかった。正直言うと今まで見たどの男性よりも。思わず見惚れている自分に気付き慌てて頭をぶんぶんと振ると電信柱に衝突し、倒れ込んだ私を副長さんは、何やってんだと笑いながら片手で立たせてくれた。
今だ電話を続ける副長さんに隠れて、こっそり頬を両手で包み込んだらほんのりと熱を持っていた。やばい、どうしよう。私、この人に惚れてしまったのかもしれない。








20120904
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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