※3Z


悶々と、ただ悶々としている。
なにか嫌なことがあったわけでもない穏やかな毎日だ。なのに、
なんていうかカラオケに行きたい衝動に駆られた。誰だって一度はある、悶々とした時の対処法。私の場合はカラオケだった。カラオケに行きたい。シャウトしたい
そんなにストレスは溜まらない方ではあるのだが、悶々としているこの気持ちをカラオケで晴らしたい。とりあえず大声出したいカラオケ行きたい。
もうこの際ヒトカラでもいい
一人でもいいからカラオケ行きたい。よしよし、きめた
ヒトカラし「名前じゃねぇかィ」
やめよう嫌な予感がする

「無視すんじゃねェや。この耳は飾り物か?ああ?」

「すみませんでしたちゃんと肉体の一部です。どうか耳を引っ張らないで下さい千切れてしまいます」

わかりゃ良いんでさァ。ちょっとカラオケ付き合えや。
いつものドSオーラを背後に従えた総悟に逆らう術を、私は知らない。何を考えているのか常時わからない。むしろ、彼の考えていることを知る人間の方が、はるかに少ないだろう。
そう、普通の人間ならばこの男の考えていることはわからないのだ。


「美空ひばりでも歌いやしょう」

「ほらやっぱりわかんない」

「俺じゃねェよ、あんたが歌うんでさァ」

「せめて近代のものがいい」

「てめェに選ぶ余地はねーよ」

ほら早く歌え。
急かされるままマイクを持たされ前奏が始まる。わっかんねーよ
適当に歌詞に合わせて自分でもわけのわからないメロディーをのせ、作曲しながらなんとか歌い切った。総悟はただただニヤニヤしながら録音していた。殴りたい。

「スッキリしたろィ」

総悟に対するイライラは募ったが、不思議と、あの悶々としていた気持ちは失せていた。これは決して 総悟のお陰ではない。美空ひばり様のお陰だ。だから得意げな顔をするな、ばか

私は彼に、一方的には理解されているらしい。






5分クオリティ。また加筆修正します

20120716
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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