筆の擦れる音のみが自室で響く。今日の俺は、実に真面目だ。ミントンにも目移りすることなく、淡々と仕事をこなしていく。否、言い換えれば、それほどまでに今日は忙しいのだ。
大量のこの報告書を済ませなければ、瞳孔かっ開きの鬼が黙っちゃいない。追い詰められている、まさにそんな状態。
 
さて、もうひと踏ん張りするか。と伸びをして体をほぐしていると、視界の端に、うっすらと小さな影がうつっていた。襖の向こうに、誰かがいる。


「……名前、なにしてんの」

びくり、面白いほど影が跳ねた。わかりやすすぎる。そろりと襖が開かれ、影は上目遣いで姿を現す。小柄な、俺の恋人。

「…仕事中に来ちゃ駄目って言ったでしょ?」

「…けち」

「…どうかしたの?」

「…べつに」


…どうやら ご機嫌斜めらしい。書類に目を戻し、筆を握る。こんな時は 触らぬ神になんとやら、だ。3文字ほど書き進めると、異様なほどの視線を感じた。そちらに目をやると、名字の香りが 俺の顔から数センチも距離のない場所にあったのだ。びびるっつの


「…どうしたんだよ?」

「……ねぇ…」

「…ん?」

「さがるに、会いたくて来たの。相手、…してよ」




 猫なで声はお手のもの



 (あーあ、明日副長に殺されるなこりゃ)






「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -