※教師土方


「せんせ、せーんせ」

タバコの煙の充満する部屋に ひとつ、甘い香りが混じった。嗅ぎ覚えのある香りに意識が揺れる。
うっすらと目を開けると、眠りにより鈍っていた感覚が徐々に目を覚ました。


「せんせ。土方せんせ、起きて。こんなとこで寝たら風邪ひいちゃうよ?」

小さい手で遠慮がちに俺の体を揺すりながら、その甘い香りは柔らかな音色で俺に話しかけ続ける。
あー…なんか、いいな、こういう感じ。

返事をせずに、雰囲気に浸りながらまどろんでいると 俺の髪を梳いていた手が止まり、代わりに、耳元に唇が寄せられた。

「…んもう、…こんなに寝起きが悪いなら せんせのとこに お嫁にいくのやめちゃうよ?」

「…」

…それは…困るな。

まだまだこの甘い香りに包まれていたいところだが、彼女の機嫌が悪くなるのは
避けたいので目を覚ますことにしよう。
なにより、嫁に来て貰えなくなるのはいやだ。絶対ェ、やだ。
お前が卒業するまで待ったんだ。意地でも嫁に来させてやる。そしてそろそろ、俺の事を名前で呼ばせて、嫁さんらしいことをしてやろう。
せんせ って呼ばれるのも、まぁ悪くはねェんだがな。



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テーマ「人外ファンタジー」
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